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2006年1月21日 (土)

フィレンツェへの旅

 一昨年の夏、ゲーテの『イタリア紀行』を読みました。
 この5年間ほど、塩野七生さんのローマやルネッサンスの作品、あるいは若桑みどりさんの『クアトロ・ラガッツイ』(天正の少年使節団の物語)等を通して、是非イタリアへ行ってみたい、と思っていました。そして近いうちのイタリアへの旅を意識して、ゲーテの『紀行』に行きついたのです。この本を読みはじめたのは8月28日ですが、その日はたまたまゲーテの誕生日だったこともあり、この偶然に軽い興奮を覚えながらの読書でした。
 ゲーテは、イタリアへの旅とそこでの古代研究を「過去の時代の尊ぶべき、永遠に過ぎ去った生活を心静かに尊敬せん」がためになすとしています。文化遺産などの過去と向き合う時の旅人のマナーとして、記憶しておきたい言葉です。また、「偉大なもの、美しいものを欣然として心から崇敬することは、実に私の性分である。そしてこの性分を、このように優れた対象に触れながら、日々刻々養い育むことは、いかなる感情にもまさる幸福である」とするゲーテに、少しでも近づくことができればと思います。
 秋になって、話題の『ダヴィンチ・コード』と『ダンテ・クラブ』を読みました。大変エキサイティングで面白かったので、ベルギーの娘に送ってやりました。すると娘は、この私からの贈り物を、夏のイタリア旅行への誘いのサインだと感じたようです。この段階では、わたしはそんなにもはっきりと、「来年のイタリア行き」を意識していた訳ではないのですが、結果的には「来年のバカンスはイタリア」との決定が、海の向こうからやってきました。
 『ダブィンチ・コード』はマグダラのマリアへの関心を強め、『ダンテクラブ』は『神曲』へと私を誘うのでした。晩秋、寿岳文章訳の『神曲-地獄編』を読み始めました。ダンテの原語が、この詩作の書かれた14世紀はじめの頃のイタリア語、トスカーナの方言を用いて書かれたという事ですが、寿岳訳も、平明な日本語ではありますが、私にとっては必ずしも簡単ではない内容でした。しかし、二度目の読書の時には、結構面白く読めました。
 読書というのは、不思議な一致というか、必然の赤い糸が、わたしを導いてくれるとでもいうのでしょうか、年明け早々に岡田温司『マグダラのマリア』(中公新書)が、また2月にはR.W.B.ルイス著『ダンテ』(岩波書店)が相次いで出版されました。とくに『マグダナのマリア』は、絵画の歴史を通して「貞節にして淫ら、美しくかつ敬虔」なマグダラのマリア像を読み解いていき、宗教画への抵抗感を拭い去ってくれるだけでなく、『ダヴィンチ・コード』で提起されたマグダラのマリア像を、さらに深く豊かにしてくれました。そして、マグダラのマリアの多くの肖像画が、フィレンツェにある。しかも、一方でダンテである。もはや行き先は、フィレンツェ以外にはありません。
 春、若桑みどりさんの『フィレンツェ-世界の都市の物語』を手にしました。フレンツェとイタリア・ルネッサンスの素晴らしいガイドブックです。絵画や彫刻、建築等の芸術作品を読み解きながら、読者をルネッサンス期のフィレンツェへと案内してくれます。この本は、今回の娘とのフィレンツェ旅行の、共通のテキストとなりました。同じく若桑みどりさんの『絵画を読む』は、その副読本といったところ。
 こうしてフィレンツェに関する読書をしながら、旅の準備を始めました。そして昨年7月、フィレンツェへと旅立ちました。

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