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2006年6月10日 (土)

ダニス・タノヴィッチの映画

 久々に、映画館へ行きました。上映されていた映画は、キェシロフスキ原案 ダニス・タノヴィッチ監督『美しき運命の傷痕』(L’ENFER地獄)05仏・伊・ベルギー・日合作。
 印象に残った場面を、いくつかメモしておきます。
 主人公は、三姉妹とその母親の4人。
 長女ソフィー。ベッドに横たわる夫の愛人に近づくソフィー。レスビアンを想起させるような妖しさに、ぞっとします。愛人の美しさは、夫への抜きがたい憎しみを募らせました。
 次女セリーヌ。寝室のベッドに全裸のセリーヌが腰掛けています。近づいてきた男に、自分を与えるためです。が、彼女の悲しい勘違いでした。男は、セリーヌの父の冤罪を拭おうと、訪ねてきたのでした。
 三女アンヌ。恋人の大学教授とその妻と娘の前での告白。「愛してる。愛を感じます。彼の仕草や視線に。もうあんな人に会えない。私にはこれが最後の愛。一緒にいたいの。」
 三姉妹の母。高校の教員室で、裸の男子生徒と向き合う夫を目撃。自ら刑事告発。刑務所で刑期を終えて帰宅した夫を待っていたのは、妻の絶望的な拒絶と憎悪でした。激しい夫婦の諍い。夫は、自ら死を選び、妻は、言葉を失います。
 それから20数年。その母の告発が、間違っていたことを、娘たちから聞かされ、しかし、「それでも私は何も後悔していない」と。
 夫であり父でありそして教師である一人の男が、生徒を庇って、自ら罪と罰を享受します。このやさしさが、男の家族に、取り返しのつかない悲劇を生み、それが、次の世代へと再生産されていきます。
 夫と言葉と世界と、すべてを拒絶した妻(母)役のキャロル・ブーケは、何か映画での演技さえ拒みきったような、凄みのある役作りでした。
 深く考えさせられる作品でした。
 同監督の前作『ノーマンズランド』も、是非観てみたい。

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