議事堂と棺の絵
盛岡市の県立美術館で、松本竣介の『議事堂のある風景』を観ました。議事堂の前を、ひとりの男が、棺を積んだ大八車を引きながら、通り過ぎていきます。議事堂の左側には、煙突から黒い煙を吐き出している工場地帯が、広がっています。政治と暮らしが、向き合っている図です。棺は、議事堂から工場地帯へ、つまり、政治から暮らしへと向かっている、と読めます。棺の中の遺体は、この男の父親だろうか、あるいは息子だろうか。それとも、政治そのものの死なのかもしれません。1942年制作の作品ですが、既に日中戦争は10年以上がたち、そして、太平洋戦争に突入した時期です。若い画家の、苦悩の表現が、画面に滲み出ています。