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2006年9月23日 (土)

青空に浮かぶ白い雲の絵

 ベルギー王立美術館展に行ってきました。ピーター・ブリューゲルからルネ・マグリットに至るフランドル・ベルギー王国400年の巨匠たちの作品展です。
 呼び物のひとつは、P.ブリューゲルの『イカロスの墜落』。おや、誰かが、シンクロナイズ・スイミングをしていますよ。漁師は、目前のばたつく足には、全く気をとられることなく、釣り糸をたれています。画面中央の羊飼いは、何か無理をして、知らんぷりを決め込んでいる様子。手前の農夫に至っては、まったく別世界のように、馬に犂を牽かせています。主題は、「無関心?」。
 左手前に働く民衆を大きく配置し、右上方に、遠くの風景を描くといった構図は、『雪中の狩人』や『牛群の帰り』と同じです。いずれも、大変美しい労働と風景の絵です。
 ヤーコブ・ヨルダーンスの『飲む王様』を、じーっと見入っていて、「ああ、人生って、こんな風に楽しめたらなあ。食い過ぎたって飲み過ぎたって、こんな喜びのなかで死んでいくのなら」なんて感じていました。肥満や飲み過ぎなど、健康を気にすることの多い昨今、こんな風に感じたのは、久々のこと。それにしても、画面の中の人々の、気持ちの良さそうな幸福感よ。
 マグリット光の帝国』が、最後の部屋の壁面に現れた時、一瞬「わあっーきれい!」と感じ、2時間近くの鑑賞の疲れを、一気に吹き飛ばしてくれました。
 針葉樹の森に囲まれた沼のほとりに、外灯によって白い瀟洒な家が、闇夜に浮かび上がっています。二階の寝室には、明かりが灯り、人がいることの暖かさを感じさせます。そして、画面の上段は、明るい昼の世界。上空の青い空には、白い雲が浮かんでいます。ひとつの絵の中に、夜と昼とが、一体になって存在しているのです。でも、この絵を見たとき、シュールな感じよりも、「この景色、見たことある(見てみたい)」といった、実在感のある魅力を、強く感じました。いままで、マグリットにおぞましさと奇妙な世界をしか見ていなかった、というより、それゆえ敬遠していたのが、嘘のような気がします。
 新しい発見に、すこし浮き立つ気分となりました。

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