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2006年12月25日 (月)

2島+α

 今年の大仏次郎論壇賞を受賞した岩下明裕著『北方領土問題』を読みました。
 岩下氏は、北大スラブ研究センターに席を置き、4000kmにわたる中国・ロシア国境の領土や移民問題を研究してきた、中・ロ関係の専門家です。
 2004年10月、中・ロ両国は、第二次世界大戦に由来する国境問題を、最終的完全に解決しました。かっては、国境の珍宝(ダマンスキー)島で、中・ソ両国の軍事衝突(69年)があり、核戦争の可能性さえ取り沙汰されたのですが、両国はこうした苦い経験を踏まえ、80年代から、とくに91年のソ連崩壊後、粘り強く誠実に交渉を続け、やっと解決に至ったのです。本書の前半は、このプロセスが詳細に分析され、国境紛争解決の教訓が、汲み出されます。要約すると次のとおりです。
 「係争地を両国が『分け合う(フィフティ・フィフティ)』という政治的妥協と、それを双方が『互いの勝利(ウィン・ウィン)』とすること」 

 この教訓の日・ロ間への具体的な応用を探る、というのが後半部の仕事です。
 まず著者は、「北方領土問題」を日・ロ国境問題として捉え直し、この解決を次世代に委ねることを無責任と断じ、問題解決への道筋を意欲的に提案します。
 日・ロ国境交渉の現状は、「4かゼロか2か」と集約されます。日本の主張は「4島返還」、ロシアの主張による現状維持は「ゼロ」、そして56年の日ソ共同宣言に基づく歯舞群島と色丹島の「2島返還」。4島返還は、ロシアにとってはゼロ回答であり、外交上の「敗北」。現状維持はもとより2島返還は、「日本の面子」を損ない、日本の勝利とはいえない。そこで著者は、「2島+α」での両国の政治的妥協の可能性を探ります。中・ロ交渉の適用、日・ロ間歴史の教訓および両国内外の要因分析等について詳細な検討が加えられます。そして、「フィフティ・フィフティによる解決とそれに基づいた平和条約の締結は、第二次世界大戦から、いや、それ以前の両国の負の歴史から互いを解放しうる」とし「未来に向けての『互いの勝利(ウィン・ウィン)』を宣言できる」と結論を得ます。またこの日・ロ国境問題の解決は、韓国、中国との関係にも適用でき、東アジア諸国との過去の完全なる清算に向けた大きな前進となりうる、と期待感が膨らみます。

 鈴木宗男議員のスキャンダル騒動以降、「北方領土問題」は、政治家からもマスメディアからも取り上げられることは、ほとんどなくなったようです。しかし、問題は何一つ解決した訳ではありません。著者の言うとおり、解決を次世代に委ねるのではなく、私たち自らが解決を決断するならば、「2+α」の現実性に着目せざるを得ないのではないでしょうか。

 

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