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2007年1月15日 (月)

新年読初め

 年明けの4日から読み始めた網野善彦著『日本社会の歴史』(岩波新書上・中・下巻)を読み終えました。私にとっては、網野作品の3作目。通史ゆえに、変転する政治動向にページの多くが割かれ、次々と登場する政治支配者たちの名前に、いささかウンザリしましたが、網野史学のスリリングで挑発的な魅力は、十分に味わうことができました。
 上巻第一章の扉には、日本海を取り囲んで東北アジアと日本列島が、南北逆さに描かれた環日本海諸国図が載せられています。これは、日本列島の社会の歴史を、「アジアの諸地域との切り離しがたい関係のなかで考えてみたい」という著者の強い意志と方法論の表明なのです。そして内容は、アジア大陸東部の陸橋(千島弧・サハリン・北海道・本州弧・琉球弧)の形成から徳川家康による日本国家の再統一までを描いた、気の遠くなるような遠大な通史です。
 
 
 

 本書ではまず。東北アジア周辺地域との、海を通した切り離しがたい関係のなかで、列島の社会が発展していく様子が描かれます。海で隔絶された孤島としての日本社会ではありません。しかも交流や交易の担い手は、時の支配者だけではなく、商人・海人・僧侶、そして時には海賊ですらありました。これは、古代からの歴史を貫通した事実です。
 こうした周辺地域との交流・交易とも関連しつつ、列島内の交通は、河海湖沼を行き来する海上交通が、大変重要な手段でした。時の支配者も、この海上交通の掌握に格段の努力をしました。農本主義を掲げる中央政府は、陸上交通に固執し続けるのですが、歴史は、海上交通に味方します。
 次に、東西南北にわたる列島各地域の、多様性と独自性とが、いきいきと描かれます。東国と西国の対立と統一、アイヌと琉球の重商主義的な活発な動きなど、興味は尽きません。これらの各々が、独自の民族と国家となっていく可能性を持っていたことは、スリリングでしかも「日本」のイメージを大きく膨らませてくれます。
 第3巻最後部に書かれた、明治政府とその指導者に対する厳しい批判は、著者の現代人に対する熱いメッセージであり、すでに著者亡き今日では、未来の人びとに対する著者の遺言、だといえるでしょう。
 
 
   

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