ロダン展
静岡県立美術館で『ロダン―創造の秘密』を観ました。フランス国立ロダン美術館コレクションの展示です。昨秋、盛岡で観たのですが、『パンセ』と『フナイユ夫人』の2作品を再び観ようと、出掛けました。
『パンセ(思索)』。ロダンの弟子にして恋人のカミーユ・クローデルをモデルにした石膏像(原作は大理石像で、今回来日しているのは、大理石像から型取りされたもの)。
ミケランジェロ作『ピエタ』の聖母マリア像や船越保武作『聖セシリア』と共通する、静謐な美しさを感じます。
ややうつむき加減のカミーユの美しい顔が、石膏の中に埋め込まれています。解説には、「物質から出現するパンセ」と評されていますが、私の受けた印象は、「出現」ではなく「埋め込み」でした。膝を折って、やや下から顔正面を見ますと、大きく見開いた目が、観る者を凝視するようです。ロダンとカミーユの10年にわたる関係が、破局へと向かい始めた頃の作品ということです。
『パンセ』の隣に、『フナイユ夫人、手で支えられた頭部』(大理石像)があります。右側の肩と項(うなじ)を浮き上がらせ、左手で頭を支えたまままどろむ女性が、いまゆっくりと大理石の中から、優美な姿を現わそうとしています。大理石から解放されるやさしさを感じます。もともと石のなかに、その姿が隠されていたのではないかと思えるような、自然さがあります。
フナイユ夫人は、ロダンのパトロンのひとりモーリス・フナイユ氏の夫人で、ロダンは、たびたび訪問したフナイユ家で目にした夫人の優雅な挙措に、つよく惹かれていた、とのことです。