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リービ英雄さんの『ヘンリーたけしレウィツキーの夏の紀行』と『最後の国境の旅』を続けて読みました。在日米国人による、日本への旅と日本からの旅を題材に、日本語で思考し記述された、フィクションとノンフィクションの紀行文学。
『ヘンリーたけし…』は、既に読み終えた『我的中国』と一対をなす中国紀行を題材とした小説で、両作品は、ほぼ同時期に書かれています。「千年前、西洋からシルクロードを渡ってきたユダヤ人は、東洋の京(みやこ)で中国人になった」。ユダヤの血をひく父親を持つ著者は、台湾で北京語に囲まれて育った自らの幼い日々を追憶しながら、千年前中国人となったユダヤ人の遺跡をもとめて、宋の古い京を訪ねます。旅の途上、中国の現代が、生々しく表現されます。そして、千年の昔、西洋から東洋へ移り住んだユダヤ人に、「常住日本的美国人」としての自分の姿を、投影させます。
私たちの政府が支持し、しかも自衛隊を派遣し続けているアメリカ軍によるイラク侵略は、今日で4年目を迎えました。米英の学者たちの組織するNGO「イラク・ボディカウント」は、この4年間に侵略によって殺されたイラク市民の死者数を、最大65,160人・最小59,326人と報告しています。バグダッドからブログを発信し続けるリバーベントは、警官たちにレイプされた若い女性のことを、痛恨の思いでキーボードを打ってます。リバーベントの絶望感が、レイプされた女性の絶望感と響きあいます。テレビに映った被害女性の目には、悲しい涙が流れています。『ファルージャ 2004年4月』の著者の1人ラフール・マハジャンが、イラク侵略4周年にあたり書いた記事が紹介されています。それは、アメリカ合州国の支援の下に、サダム・フセインがおこなった化学兵器によるクルド人攻撃に関してです。ドキュメンタリー映画『リトルバード―イラク戦火の家族たち』の監督 綿井健陽さんは、NHK記者がこの4年間、継続してバグダッドに滞在し続けながら取材していることを報告しています。日本のマスメディアでは、NHKだけのようです。確かに、さきほどの9時のニュースで、NHK記者がレポートする様子が、放映されていました。
私たちの政府が支持し続けるイラクの現状を、今後も注意深く執拗に追って行きたい。そして、1人でも多くの日本人が、真実を知リ、夏の参院選挙の判断材料の大きな要因とすることを、心から願います。
茨城県近代美術館で「加山又造展」を観ました。加山又造は、同じ西陣の出身だということで、何となく親近観を感じてきた画家です。しかも作品は、美しいものを美しく、好きなものを愛おしく、そして悲しいものを悲しく表現し、画いています。素直だなあ、と心から思い、作品を観る私も、素直に加山の作品世界に入っていけるように思いました。
加山は、猫が好きです。今回出品の『華と猫』と『凝』の2作品では、ペルシャ猫の持つ崇高さを美しく、しかしあくまでも愛おしく画いています。きらっと光る爪は、次の瞬間の動きを予感させます。猫好きにとっては、藤田嗣治の猫同様に、たまりません。
2枚の裸婦像『黒い薔薇の裸婦』『白い薔薇の裸婦』は、ともに不思議な雰囲気で、品のいいエロチスムが、描かれています。真紅のマニュキアに彩られた四肢の爪と真っ黒の陰毛が、印象的でした。
いつも美術館訪問時にやる「1枚の作品」選びは、今日は到底無理です。すべての作品を、「1枚の作品」としたいような気分です。が、自分に課した宿題なので、あえて選択すれば、それは『冬』です。
岡田温司著『処女懐胎―描かれた「奇跡」と「聖家族」』(中公新書)を読みました。同氏の前作『マグダラのマリア』(中公新書)から丁度2年目です。その『マグダラ』が、一気に読み終えるほどに面白くかつ刺激的であった経験から、書店でこの本を手にしたときから、ワクワクしたものです。「キリストの「両親」の場合、いってみれば「できちゃった婚」なのだが、その子の父親は、その婚約者とは別の人」なんて記述にぶち当たってみると、なになにっと、好奇の虫が蠢(うごめ)きだします。が、内容は至って真面目でアカデミック。キリスト教とその教義が、宗教学、図像学、神話学、人類学、医学誌、社会史、家族論およびジェンダー論を視野に入れた多角的な観点から、解き明かされていきます。
先日、ミモザの黄色の花について書いたところ、ブリュッセルの娘からメールが来ましたので紹介します。
「3月8日=ミモザの日」は、イタリアだけではなく南フランスにもあるとか。ただ、ベルギーでは「ミモザの日」は馴染みがないようで、娘の周りは誰も知らなかったみたい。ミモザを贈る習慣は、ミモザの木が育つところのもので、ベルギーのようにミモザの育たない寒い地域では、物が手に入らないから習慣そのものがない。でも、「女性の日」はインターナショナル。3月8日は「国際ウーマンズディ」。男性は、例えば、バラを1本ずつ20本とか花屋で買って、職場の女性たち、友人、家族に贈っています。男性から女性への贈り物といえば、4月には、「秘書の日(今はマネージメント・アシスタントディという)」が待ち構えています。先月のヴァレンタィンディから引き続き、男性の方々には何かと出費の重なる季節です。出費が重なると言いながら、贈る側も結構楽しんでいるようで、日本の「義理チョコ」っぽい感じもしないでもないけれど、モノを贈ったり贈られたり、それなりに楽しいことかも。
ところで少し前まで、お花屋さんのウィンドウいっぱいに、ミモザの枝ものが飾ってありました。通りを行きかう人の反応は上々で、店の中に入って匂いだけ楽しむ人もあるようです。今は、ミモザにかわって桜の枝物とリラの花のデコレーション。ミモザほど「ワーオー!」という感じはないですが、こちらも春らしくて結構。
ブリュッセルにも春の装いが、徐々に整いつつあるようです。