「二人のクローデル」展
ことしの2月、静岡県立美術館で観たロダン作『パンセ』は、その静かな美しさに強く惹かれると同時に、何かを凝視する眼に不思議な寂しさを感じ、しばらくの間、その場を離れられなかったものです。モデルは、ロダンの弟子であり愛人でもあったカミーユ・クローデルでした。そのクローデルの作品が来ているというので、川口市で開かれている『二人のクローデル展』へ行ってきました。
「彼女はたぐいまれな才能と美貌に恵まれ、ロダンとポール・クローデルという二人の芸術家に深く霊感を与えましたが、自らは精神に変調をきたして創作活動に挫折しました。そして孤独のうちに30年間もの年月を精神病院で過ごし、一生を終えたのです。」(展覧会のリーフレットから)
男女の魂の結合の賛歌、恍惚としてワルツを踊る男女、大きな波に飲み込まれそうな3人の少女たち、そして、ロダンと内妻とカミーユの三角関係を表現した3人の男女像など、出品されている多くの作品が、ドラマチックでしかも激しい動きが表現されています。そうしたなかで、ひとつの小さく静かな作品が、眼に留まりました。 『もの思い』(1898年23.7×22.4×19.3㎝)。
一人の若い女性が、暖炉に向って跪き、炉の火に顔を向けて、何かしらもの思いに沈んでいます。祈っているのかもしれません。クローデル34歳のときの作品です。既にロダンとは別れており、この作品の7年後に、精神に異常をきたし、病院に入院させられます。静かなもの悲しい作品です。(出品作品は、暖炉を含めすべてブロンズ)
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