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2007年5月20日 (日)

映画『サン・ジャックへの道』

 コリーヌ・セロー監督作品『サン・ジャックへの道』を観ました。
 5人の男と4人の女9人組の、フランスのル・ピュイからスペインの聖地サンティアゴ・コンポステーラ(サン・ジャック)までの1500kmの巡礼物語。まずは、すこぶる仲の悪い3人兄弟。会社経営と家庭不和で薬と携帯電話を手放せない兄、失業中の夫を抱えたシニカルで無神論教師の妹、そして自由な放浪生活で酒に溺れる弟。3人兄弟が、同行・同宿で巡礼の旅に出ることが、亡くなった母親の遺した遺産相続の条件。つぎに4人のハイティーンたち。女の子二人は、楽しい山登り感覚で、化粧品もばっちり仕込んで参加。男の子はアラブ系フランス人。ひとりは女生徒の尻を追っかけて、他のひとりは、メッカへの旅と信じて参加しました。何時もターバンを被った、メランコリックで美しい女性も参加しています。そして最後に、病気の子供と浮気症の女房を自宅に残したベテランのガイドの男。総勢9人の巡礼団です。

 魂の救済と平安を求めて、といった宗教的な動機を持って参加したのは、アラブ系の青年が唯ひとり。ただ彼は、難読症を克服するために、メッカを目指しているのですが。
 体重の5分の1の荷物までと注意されながら、日用品をうんと持ってきた社長と女生徒は、巡礼の途中、ものを捨てていきます。無駄を削ぎ落とし必要最小限のものを持って、再び歩き始めます。途中、突っ掴り合いの大喧嘩をしていた兄妹も、長旅の労苦を共有する中で、和解していきます。頭髪を失ったターバンの女性は、そのままで美しいとガイドから指摘され、自信(自分)を取り戻します。メッカを目指す青年は、無神論教師の教えを受け、徐々に文字が読めるようになります。そして、・・・・・。それぞれが、自分を見つめ直し、再生への切っ掛けをつかんでいきます。
 巡礼の途中、夢と幻想の場面が、ところどころ挿入されます。個々の参加者固有のものもあれば、誰のものとははっきりしない共有の夢と幻想のようなものもありました。30年以上前に観た、寺山修司の作品の中に、同じようなイメージの場面があったような気がしました。おぼろげな記憶で、不確かですが。
 ここ何回かは、政治的なメッセージ性の強い映画が続いたのですが、『サン・ジャックへの道』は、抑え気味ながらも、人間の触れ合いの喜びを感じさせてくれる映画でした。週末の夜、楽しく愉快なひとときを、過ごすことができました。

 

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