蛍
梅雨の中休み、快晴に恵まれ、家の周囲を歩いてみました。
隣家の農家茶屋の主人が、麦刈りを始めました。昨年の11月に種蒔きをした小麦が、完熟して濃い黄土色を呈し、刈り取り期を迎えたのです。農家茶屋では、この小麦をつかって手打ちうどんを作り、予約制の自店でお客に振舞ったり、町の農産物直売所で販売します。そして小麦の後作には蕎麦が入り、秋には、手打ち蕎麦がメニューに加わります。いまから新蕎麦に舌鼓を打つすがたを想像します。
このあたりでは、田植えは、10日ほど前に終了しました。小さな沢沿いに、狭い田圃が段状にあるのですが、実質お天気任せの天水田でもあり、年々耕作放棄地が増えてきています。放棄された田圃には、ススキやガマが生い茂り、中には鳥たちが種子を運んできたのか、柳のような木が、大きく育った田圃すらあります。この耕作放棄地の拡大が、里山に人が入らなくなったのと相まって、ケモノたちの出没につながっているようです。彼らの身を隠す場所が、いっぱいあるのです。
畑と山の境界近くに、180×120×90㎝大の鉄製の檻がありました。イノシシをとるための仕掛けの檻です。先日、近所の農家の人たちが集まって、どこに設置するかと話し合っていたものです。もうひとつのイノシシ対策として、畑の周りをすっぽりとトタン板で囲ってしまう方法が、あちこちで見られるようになって来ました。ほんのここ1、2年の現象です。
近所のひとから近くの集落に蛍が出始めたことを知らされ、早速見に行ってきました。自宅から車で5分くらいのところ、人家はなく何枚かの狭い田圃の脇に、小さな川が流れています。その水辺から蛍たちが飛び交い、月明かりのない真っ暗闇の中、ぽっぽっとかすかな光を点滅させていました。浅からぬ里山のなか、家内と2人だけの贅沢な蛍観賞会でした。
群馬県内には各地に蛍を守る会があり、河川の水質改善のための工夫や蛍のえさであるカワニナの養殖などに取り組んで、それぞれに貴重な成果を挙げています。私の住む村にもやはり蛍を守る会があり、先週の日曜日には、昔蛍が飛び交ったという谷地の清掃をしました。篠竹が繁茂し細い水路も崩れて、見る影もないような荒れようでしたが、6,7人で半日、草と篠を刈り取ったところすっきりとしました。来年には少し早いようですが、何年か後には、私たちの集落にも蛍が飛び交うことを期待しています。
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