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2007年8月26日 (日)

ネット・デモクラシー

  先の選挙で当選した元自衛官佐藤正久参院議員の発言が、ネットで波紋を広げています。
 その発言とは、「(オランダ軍が攻撃を受ければ)情報収集の名目で現場に駆け付け、あえて巻き込まれる。巻き込まれない限りは(武器使用が可能な)正当防衛、緊急避難の状況はつくり出せない。普通に考えて手を差し伸べるべきだという時は行ったと思う。日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれてやろう」というもの。 集団的自衛権を研究する政府懇談会が、海外に派遣された自衛隊が、活動をともにする他国軍が攻撃された場合に現場へ移動して応戦する「駆け付け警護」を容認する方向で一致した、とするテレビ報道のなかでの佐藤議員のコメント。自衛隊法および憲法違反、シビリアンコントロール逸脱等の問題が指摘されています。
 ネットでの波紋の広がりを追っていくと、加藤哲郎さんのいう「インターネット・デモクラシー」の実相が、見えてきます。

 佐藤正久発言問題が、ネット等で広がっていく状況を、時系列で並べて見ます。
 問題の報道は、8/10夜のTBSニュース。
 ①8/11 まず翌日の朝、「うさちゃん騎士団SC」さんのブログが、「イラク派兵で暴走しだした『軍の論理』と、『滅びの美学』を追求する『美しい国』内閣?」と題していち早く問題視し、シビリアン・コントロール逸脱を厳しく批判しました。
 ②8/12 SCさんのブログを読んだ「ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)」さんのブログが、「国民を騙すつもりだった~佐藤正久は議員として不適切、直ちに辞任せよ!」と迫ります。1931年9月18日に起こった柳条湖事件に言及し、軍部暴走の歴史と朝日・毎日等のメディアによる戦争扇動報道を想起させています。
 ③8/12 また同じ日、「とむ丸の夢」さんは、やはり上記SCさんのブログを読んで、「元自衛官佐藤正久参院議員のトンデモ度」を書きました。「“人の情け”のもろい部分に巧妙に訴えるこの扇動家が自衛隊の期待を背負って自民党公認で立候補した時点で、アベ氏を支える勢力は、また一歩戦前レジーム復活に近づくぞ、とほくそ笑んだに違いありません」と警告しています。
 ④8/14 インターネット新聞「日刊ベリタ」が、「イラク自衛隊は『関東軍』だった!『あえて巻き込まれ』戦争状態を作り出すつもりだったと佐藤氏」(大野和興)の記事を掲載しました。私は、このベリタの記事で、佐藤発言を知りました。
 ⑤8/16 弁護士を含む市民有志が、佐藤参院議員に公開質問状を出しました。その内容は、「杉浦 ひとみの瞳」「津久井進の弁護士ノート」にアップされています。
 ⑥8/17 しんぶん赤旗が、前日の市民による公開質問状提出の紹介記事(イラク派兵「駆けつけ警護」発言 市民ら違憲と質問状)として、ペーパー日刊紙としては初めてこの問題を取り上げました。
 ⑦8/21 大阪日日新聞が、慶大教授小林節さんの「『ひげの隊長』の『駆けつけ警備』発言」のコラムを掲載しました。地方紙ですが一般紙としては、これが初めてのようです。
 ⑧8/22 TBSニュースは、「憲法9条をないがしろにする」と批判している弁護士グループらが、情報公開で得た資料を基に、「佐藤氏の発言は自衛隊全体の方針ではないか」と指摘した、と報道しました。
 ⑨8/22 天木直人さんは、自らのブログに「『駆けつけ警護』発言を報じないメディアと野党の責任」を追及しました。
 ⑩8/23 北海道新聞は、前日22日開かれた弁護士を中心とする市民らの、佐藤発言を「シビリアンコントロール(文民統制)を無視するものだ」と批判する記者会見の模様を報道しました。
 ⑪8/25 続いて北海道新聞が、「駆けつけ警護*制服現場の危険な発想」と題する社説を発表しました。佐藤参院議員の発言は、シビリアンコントロールの原則から決して許されない、と明快に非難するとともに、「独り善がりの正義を掲げ、法の処断を恐れずにそれを実行しようと高ぶる姿には、二・二六事件などを引き起こした旧日本軍の青年将校を思わせる危うさがある」と、厳しく警告しました。

 佐藤参院議員発言問題は、8月10日のTBSニュースに発し、いくつかのブログをとおして波紋は広がり、弁護士・市民の質問状と記者会見などの抗議行動が新聞社の報道となり、ついには地方紙とはいえ発行部数では120万部の有力紙の社説にまで、波及してきました。ほんの2週間での出来事です。私たちは、インターネット・デモクラシーの力のあり様を知る貴重な経験をしている最中だと実感します。いままでのところ、大手新聞社は、取り上げていません。こんご、国会での与野党間の論戦やマスメディアの報道を見守りながら、ネットで活躍するネチズンたちの発するニュースや情報に、眼を凝らしていきたいと思います。

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