ギャヴィン・フッド監督作品『ツォツィ』を観ました。
高層ビルが林立する大都会と無毛の原野とのあいだに、貧しい人々の住むスラム街が広がっています。この街は、人々の暮らしの場であると同時に、暴力と犯罪の渦巻く場でした。主人公ツォツィは、こうした街に住むチンピラ仲間のボスです。子分は3人。インテリ崩れの年長の男、切れやすくカミソリのような若造、そして人のよさそうな肥満の男。
4人は地下鉄の中で、恰幅のいい黒人男性を襲い、財布を奪います。声を出しそうになった男性を、仲間の一人が、アイスピックで刺し殺します。スラムへ戻り、はじめての殺人に、仲間は動揺します。「品位という言葉を知っているか?お前の本当の名前は何だ?お前は捨て犬か?」暴力を嫌うインテリ崩れから執拗になじられたツォツィは、男を殴りつけ、血まみれにします。
郊外にある豪邸の前に立つツォツィ。裕福な黒人女性の乗るBMWをカージャックします。奪われた車に追いすがる女性を、ピストルで撃つ抜きます。運転のできないツォツィは、逃走途中で道路標識に衝突し車を止めました。車中のものを紙袋に入れて車から離れようとした時、赤ん坊の泣き声に気づきました。そのまま立ち去ろうとしながら、瞬時ためらい、車に戻って赤ん坊を抱き上げ、紙袋に入れて連れ帰りました。
こうした展開の前半は、主人公の顔の表情は終始、すさんで険しく、暴力と犯罪の連続に、目を背けたくなります。チンピラたちに、激しい嫌悪感をすら抱きました。絶望感ばかりが強調される映像に、いささかウンザリもしました。