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2007年12月31日 (月)

映画『厨房で逢いましょう』

   ある田舎町のレストランに集った三組のお客たち。彼らは、各々のテーブルでシェフ自慢の料理に舌鼓を打っています。会話ではなく、料理そのものを愉しんでいます。顔には満足の表情が一杯で、まさに至福のときを過ごしています。おや、皿を舐めている男性もいますよ。そして食事が終わったとき、全員が立ち上がって、シェフに対して賞賛と感謝の拍手を贈りました。たった三つのテーブル、二月まで予約で一杯、そして料金は300ユーロというレストランの、ある日のディナー風景です。思わず舌なめずりをしました。昼食をとった直後なのに、お腹が鳴るような気分でした。俳優たちは演技ではなく、きっと本当に美味しい料理を堪能しているんだなあ、と思いました。
 ミヒャエル・ホーフマン監督作品『厨房で逢いましょう』(ドイツ・スイス 06)のワンシーンです。今年観納めの、ちょっと素敵な映画でした。エンド・クレジットが流れる様子を見ながら、心のなかで、満足のため息を吐き出しました。

2007年12月29日 (土)

歴史の真実は?

 今年も、残すところあと2日となりました。このブログの今年の記事数は100件を超え、年初めに自分に課した「週2回ペース」を、なんとかこなしたことになります。この100数件の記事の中で、年末になって再び思い起こされたことが、ふたつありました。
 そのひとつは、5月に紹介した朴裕河(パク・ユハ)著『和解のために』(平凡社06.11刊)が、今年の大佛次郎論壇賞を受賞したことです。大変うれしい。安倍政権の庇護の下で、歴史を捻じ曲げ排他的なナショナリズムをあおり続ける人たちが、わが世の春を謳歌しているさなかに、日本文学を研究する隣国のひとりの学者が、静かに理性の声で、日本と韓国の人と人との和解を語りかけたものです。今年の読書のなかでは、最も感動した書物のひとつです。大佛次郎論壇賞受賞を契機に、より多くの人びとがこの書を読まれることを、心から願います。
 そして二つ目は、沖縄戦の「集団自決」についての教科書検定問題。「集団自決」から「軍の強制」を削除した検定結果に対して、4月始めの記事に、「日本を戦争のできる国にしょうとしている人たちの、飽くことのない黒い企みのひとつ」と指摘しました。また、沖縄の人たちの怒りは、日本政府の史実歪曲に向かいました。9月には史上空前の規模で、検定意見撤回を求める県民大会が開かれました。このような歴史の真実を求めた運動が、歴史的にも世界的にも、かつてあったでしょうか。しかし年末の26日、文部科学省は、「軍の強制」を削除した検定意見を撤回せず、日本軍による「命令」、「強制」などの記述を認めませんでした。沖縄県民の求めた要求を、実質的に拒んだのです。
 
 この正月休みは、「世界」臨時増刊号『沖縄戦と「集団自決」 何が起きたか、何を伝えるか』(岩波書店07.12刊)を読む予定です。沖縄の人びとの怒りと悲しみに、読書のなかで出来るかぎり近づきたいと思います。      

2007年12月22日 (土)

世界文学の最先端は?

 リービ英雄著『越境の声』(岩波書店 07.11刊)は、久々に読んだ大変刺激的な文学対談集でした。私にとってやや難解な論点は、繰り返し読むことで、どうにか理解できるようになりました。対談相手は、富岡幸一郎(文芸評論家)、沼野充義(文学者)、青木保(文化人類学者)の3人の批評家と、多和田葉子、水村美苗、莫言、大江健三郎の4人の小説家。アメリカ出身の現代日本文学作家である著者が、これらの「創作者や批評家たちとめぐり会い、彼らの声に耳を傾けることによって・・・現代の表現者は皆、異言語に身をさらしてきた」ことを発見します。ここに著者は、世界文学の最先端のありか、を見いだします。

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2007年12月19日 (水)

サティのジムノペディ

 車内や部屋でよく聴く音楽に、エリック・サティ(1866-1925)のピアノ曲があります。娘の置いていったCDのなかの1枚で、なかでも『ジムノペディ 1.2.3』(『サティ大好き』PHILIPS)に心惹かれ、私のベストコレクションのひとつとなっています。静かにゆっくりと、しかし、決して力強さを失わずに、ピアノの美しい音色が流れます。ピアノの持つ本質的な美しさを引きだすために作曲された、そんな感じの曲です。サティの指示は、
 第1番 ゆっくりと悩めるごとくに
 第2番 ゆっくりと悲しげに
 第3番 ゆっくりと厳かに
 このCDを聴くまでは、サティという作曲家は知りませんでした。生涯、奇行と風変わりな出で立ちで過ごし、ただ一度の恋、その相手は、画家ユトリロの母シュザンヌ・ヴァラドン。音楽そのものとともにその人生も、強く惹かれる作曲家です。

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2007年12月16日 (日)

初冬の里山

P1050593  昼食の後、家の近くを散策しました。ななめ向かいの農家には、10日ほど前から、たくわん用の大根が干してあります。このあたりの冬の風物詩です。柿の木は、各戸に1本程度なので、干し柿はわずかしか作っていません。いま近所の農家は、シモニタネギや白菜を収穫しては、町の直売所へ出荷しています。近頃は、下仁田ネギの表示については、下仁田町産しかだめとの論議があるようですが、あの太っちょネギは、やはりシモニタネギとしか言いようがありません。

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2007年12月14日 (金)

サラエボの花

 ヤスミラ・ジュバニッチ監督作品『サラエボの花』を観ました。
 1992-95年の内戦から10年ほどたったボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボ。繁華街は買い物客で賑わい、ナイトクラブでは男と女が踊りや歌を愉しんでいます。こうして平和の戻った街で、シングルマザーのエスマと12歳の娘サラは、つましいながらも親子仲睦まじく暮らしています。男子生徒に混じってサッカーに興じるサラは、修学旅行を楽しみにしています。内戦で犠牲となったシャヒード(殉教者)の子供には、旅費は免除されるとのはなしを聞き、サラは母親のエスマに、父親がシャヒードであったことの証明書をとるように求めます。しかしエスマは、話をはぐらかしひたすら金の工面に走ります。母親の態度に、何か不自然さを感じながらも日がたっていき、サラは苛立ちます。容易に金の工面できないエスマは、苦悩を深めますが、その苦悩の底には戦争中の悲惨な体験が横たわっていました。戦争中、彼女に何があったのか?
  

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2007年12月 9日 (日)

オン・ザ・ロード

 池澤夏樹個人編集「世界文学全集・全24巻」の配本が、始まりました。編集者池澤は言います。「世界はこんなに広いし、人間の思いはこんなに遠くまで飛翔する。それを体験して欲しい」。20世紀後半の外国文学24巻36作品を集めた文学全集です。作品一覧表をみて読書好きを自認している自分が、すこし恥ずかしくなりました。私の読んだ本は、ミシェル・トゥルニエ『フライデーあるいは太平洋の冥界』の一冊だけでした。むしろ映画で観た作品が多い。ギュンター・グラス『ブリキの太鼓』、ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』、マルグリット・デュラス『愛人 ラマン』、エルサ・モランテ『アルトゥーロの島』などなど。いずれも、いまでは懐かしい映画作品ばかりです。
 ひとつ池澤さんの誘いにのって読んでみるか、と最初の配本ケルアック著『オン・ザ・ロード』(07.11刊)をアマゾンに申し込みました。作品は勿論、著者もはじめての人。そもそもアメリカ文学を、あまり読んでいません。

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2007年12月 6日 (木)

呉清源 極みの棋譜

  銀座和光うらのシネスイッチ銀座にかかっている田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)監督作品『呉清源 極みの棋譜』を観ました。100年に一人といわれた天才棋士の生涯を描いた作品です。囲碁を知らない私は、呉清源という名前も知りませんし、映画の核となる碁の話も、さっぱりわかりません。歴史的な対局場面や芸術的な美しい碁盤など、囲碁ファンにとってこの映画は、きっと珠玉の作品として映えるのではないでしょうか。でも、五目並べしか知らない私にも、この映画のかもしだす詩的な静けさと美しさは、十分に魅力的でした。そしてなによりも、日本と中国の関係について、いくつかの考えるヒントを与えてくれました。

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2007年12月 4日 (火)

気になるウェブ記事

 防衛省汚職が、政・財・官を巻き込んだ泥沼の様相を呈し始めました。新聞・TV・週刊誌等の各メディアも、連日トップニュースの扱いで、事件の拡がりと底深さをうかがわせています。国会の追及と検察のメスがどこまで真相に迫ることが出来るのか。このニュースにはしばらく目が離せません。
 ウェブ記事では、世に倦む日々が日米平和・文化交流協会の秋山直紀氏とその周辺による苅田港毒ガス弾処理利権について、詳細を報告しています。秋山氏は、日米政府関係者と日米軍需産業の癒着の中心にいると目される人物。検察は、更に沖縄米軍再編利権についても捜査の手を伸ばしています。守屋前次官のゴルフ接待といったみみっちい事件から、日米軍事同盟の暗闇を暴く大疑獄事件に発展する可能性がでてきました。

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2007年12月 2日 (日)

藤田嗣治『秋田の行事』

P1050532  週末、秋田市にある平野政吉美術館を訪ねました。三度目の訪問ですが、お目当ては前回同様藤田嗣治コレクション、とりわけ大作壁画『秋田の行事』。美術館に入り左にまがると、隣りの大きな部屋の正面に、この大壁画があります。広い壁面一杯に堂々と掲げられており、観る者を圧倒します。(写真は『藤田嗣治画集―素晴らしき乳白色』講談社02刊から)

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