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2007年12月29日 (土)

歴史の真実は?

 今年も、残すところあと2日となりました。このブログの今年の記事数は100件を超え、年初めに自分に課した「週2回ペース」を、なんとかこなしたことになります。この100数件の記事の中で、年末になって再び思い起こされたことが、ふたつありました。
 そのひとつは、5月に紹介した朴裕河(パク・ユハ)著『和解のために』(平凡社06.11刊)が、今年の大佛次郎論壇賞を受賞したことです。大変うれしい。安倍政権の庇護の下で、歴史を捻じ曲げ排他的なナショナリズムをあおり続ける人たちが、わが世の春を謳歌しているさなかに、日本文学を研究する隣国のひとりの学者が、静かに理性の声で、日本と韓国の人と人との和解を語りかけたものです。今年の読書のなかでは、最も感動した書物のひとつです。大佛次郎論壇賞受賞を契機に、より多くの人びとがこの書を読まれることを、心から願います。
 そして二つ目は、沖縄戦の「集団自決」についての教科書検定問題。「集団自決」から「軍の強制」を削除した検定結果に対して、4月始めの記事に、「日本を戦争のできる国にしょうとしている人たちの、飽くことのない黒い企みのひとつ」と指摘しました。また、沖縄の人たちの怒りは、日本政府の史実歪曲に向かいました。9月には史上空前の規模で、検定意見撤回を求める県民大会が開かれました。このような歴史の真実を求めた運動が、歴史的にも世界的にも、かつてあったでしょうか。しかし年末の26日、文部科学省は、「軍の強制」を削除した検定意見を撤回せず、日本軍による「命令」、「強制」などの記述を認めませんでした。沖縄県民の求めた要求を、実質的に拒んだのです。
 
 この正月休みは、「世界」臨時増刊号『沖縄戦と「集団自決」 何が起きたか、何を伝えるか』(岩波書店07.12刊)を読む予定です。沖縄の人びとの怒りと悲しみに、読書のなかで出来るかぎり近づきたいと思います。      

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