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2008年6月28日 (土)

日朝国交正常化への道

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、6者協議で合意した「核計画の申告」を議長国・中国に提出し、これを受けアメリカ合州国政府は、北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除を議会に通告しました。北朝鮮の核廃棄に向けた一歩が踏み出されたことを、率直に評価したい。これに連動し日朝間で、拉致問題解決に向けての前進がはかられることを、心から願います。韓国の金大中元大統領と盧武鉉前大統領の太陽政策が、6ヵ国協議を構成する周辺4ヵ国の首脳によって、継承され始めました。近い将来、これらの6ヵ国によって、東北アジアの平和と協力の礎が築かれることを、期待します。 

 「世界」7月号(岩波書店08.06刊)は、『対北朝鮮―いまこそ対話に動くとき』と題した特集を組み、その冒頭に、和田春樹さん他11名による『共同提言 対北政策の転換を』が掲載されています。北朝鮮を取り巻く情勢が大きく動こうとしている現在、日朝間の長い歴史を踏まえた、学者やジャーナリストたちの両国の国交正常化に対する熱く真摯な思いを、共有したく思います。以下、提言の概要を、紹介します。

 『提言』はまず、日朝国交正常化の必要性について、語ります。
 朝鮮民主主義人民共和国は、日本が国交をもたない唯一の国です。
 一衣帯水の隣国であり、「高句麗から与えられた文化面での恩恵と度重なる日本軍の平壌攻略と占領・・・そういう関係にある国が国交をもっていないというのは異常である」と断じます。
 また、1910年の韓国併合後、日本の朝鮮植民地支配は36年間におよびました。この間、「多くの苦痛と損害を朝鮮の人々に与え」ましたが、戦後63年、「朝鮮民主主義人民共和国との間には、植民地支配の清算がいまだ終わって」いません。
 しかも、2006年のミサイル発射や核実験に対して、日本政府は経済制裁を加え、「国交がないというだけでなく、ほとんど全面的な遮断に近い状態」になっています。
 このままでよいはずがありません。隣の国を理解しょう。その苦難に心寄せよう。飢えた隣人を助けよう。敵対と緊張要因を取り除こう。核ミサイルの開発配備をやめさせよう。拉致問題の解決を進めよう。隣国を「嫌う」ことをやめよう。こうしたことを実現していくために、日朝国交正常化が必要なのだと、『提言』は明言します。

 次に『提言』は、日朝国交正常化の課題を、3項目あげます。
 第1の課題は、植民地支配の清算。これは、02年小泉訪朝時の日朝平壌宣言の「痛切な反省とお詫び気持ち」にもとづく具体的な行動をとることです。
 第2の課題は、1950年に勃発した朝鮮戦争以降の日朝間の敵対と緊張の関係を終結させること。日本市民の拉致事件や在日朝鮮人の人権抑圧問題は、敵対と緊張関係の中で発生した事態です。
 第3の課題は、核・ミサイル問題の解決。

 『提言』は、これまでの国交正常化の努力を振り返ります。90年の金丸・田辺代表団の訪朝を切っ掛けにした、国交正常化交渉の開始と挫折。02年9月の小泉訪朝。このときの日朝平壌宣言では、植民地支配と拉致・工作船について双方が謝罪し、和解への大きな一歩を踏み出すかに見えました。しかしその後の、拉致問題をめぐる北朝鮮パッシングを背景にした、06年の安倍政権による制裁措置は、いかなる成果もあげず完全に行き詰りました。『提言』は、これまでの考え方、進め方を改めなければならないと主張します。

 日朝国交正常化の考え方、方法と工程の『提言』。
(1)核開発と拉致問題の解決は、国交正常化の過程でねばり強く交渉し、段階的に目標を達成するのが、現実的としています。
(2)この「段階的な進め方」というのは、05年6者協議の「『行動対行動』の原則に従い、共同声明を段階的に実施していく」という国際的な取り決めを指します。
(3)「北朝鮮がミサイル発射と核実験を行わず、6者協議の共同声明に従うことを誓約し・・・第二段階措置を完成した場合は、アメリカがテロ支援国家指定を解除するのに合わせて、現在の制裁を解除するのが妥当」だとしています。重油供給や食料人道支援の再開も検討すべき、と提案します。今まさに、制裁解除の時期となりつつあります。
(4)「在日朝鮮人とその団体に対する圧迫はただちにやめなければならない」。
(5)「歴史清算の問題では、国交樹立以前の前倒し措置として、植民地支配の・・・被害者に対する個別的措置の実施に入ることがのぞましい」。

 最後に『提言』は、日本社会に住む市民に向かって、宣言します。
 「2010年、われわれは韓国併合100年の記憶の年を迎える。この年までに朝鮮民族と日本国家の関係に決着をつけなければならない。日朝交渉はそのとき開始後20年となる。日朝国交正常化条約の調印は2010年までに成し遂げる必要がある。そのためには、日朝交渉の進展と6者協議の進展をはからなければならない」。(以上『提言』概要)   

 提言に使われている「朝鮮民主主義人民共和国」という表記は、ひさびさに目にしました。70年代前後は日常的に、一方で「北鮮」という人がおれば、他方に「朝鮮民主主義人民共和国」(または単に「共和国」)と呼ぶ人々がいました。もちろん、多くの人が「北朝鮮」といってましたが。いつからか、新聞にも雑誌にも「朝鮮民主主義人民共和国」という正式名称は、消えてしまいました。「アメリカ合州国」を単に「アメリカ」と称するように、「朝鮮民主主義人民共和国」を「北朝鮮」と称しても、特に違和感はありませんが、正式の国の名称を呼ぶ時はやはり、正式名で表記するのが望ましいと思います。
 

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