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2008年7月12日 (土)

ルコント監督『ぼくの大切なともだち』

Photo   「お前の葬式なんて、だれも来るもんか。友だちが、だれもいないじゃん」なんて言われたら、やはりショックだろうな。ところで、私の友だちってどれほどいるのだろうか。自分が「親友」と思っていても、相手がどう思っているのか、わからない。そういえば何年か前、「退職後の生活設計」研修会の講師がいってました。「受け取った年賀状から義理のものを除けば、何枚残りますか。その人こそが、退職後のあなたの宝」。
 パトリス・ルコント監督作品『ぼくの大切なともだち』(06年フランス)をみながら、すこし切なくなりながら、こんなことを思い出していました。

 古美術商のフランソワが、仕事仲間から、そのように宣言されたのです。大切なギリシャの壺を賭けて、10日以内に親友を紹介してみせると、みんなの前に約束します。そして、フランソワの友だち探しが始まります。友だちリストのいちばんの同業者からは、「ただの商売敵」と追い返され、小学校時代の親友からは「ムカつくうぬぼれ屋」とバカにされます。たまたま乗り合わせたタクシーの運転手ブリュノは、おしゃべりで愛想よく、だれかれとなく仲良くなります。フランソワは、このブリュノから友だち作りの指南をうけることに。
 フランソワの人間関係にはいつも、お金が付きまといます。指南役のブリュノにも、お金で友だち作りを習おうとしますし、酒場で見知らぬ男たちをおごろうとして顰蹙を買い、ブリュノの実家では、二束三文のテーブルを「値打ちもの」と偽って、高額に買い取ったりします。友だちができそうになると、お金でそれを確実なものにしたくなる。他人へのおもいやりのこころをもたない利己主義者なのです。一方ブリュノは、街で偶然であった老婦人とも、すぐに仲良くなり、タクシーのお客を喜ばすスベも心得ています。しかし楽しそうな彼にも、どこか影がつきまといます。自分を殺しひたすら相手に合わせる利他主義者。
 10日間の約束の日が近づきます。友だち作りに力を合わせる二人に、友情のようなものが、芽生え始めます。フランソワは、ブリュノこそ「親友」だと考えます。しかし、「親友」の意味がわからない。約束の共同経営者がいいます。「あなたのために危険を冒してくれる人」。そこで、フランソワはブリュノに、ある企みを頼みます。そして・・・・・。

 『髪結いの亭主』(1990)のルコント監督の最新作。オープニングからエンドまで、画面に惹きつけられ飽きることがない。登場人物たちに感情移入していき、ハラハラしたりイライラしたりで、感情の起伏も激しくなります。だから、簡単に感動したり、涙ぐんだり。ルコントの手にかかると、いつもこうです。そして、心底からここちよさを味わってエンドを迎えます。またひとつ、お気に入りの映画が増えました。

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