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2008年8月31日 (日)

残雪著『痕』

Photo 池澤夏樹個人編集『世界文学全集』全24巻(河出書房新社 07.11- 刊)のうち、アジアを舞台にした作品は既に、M・デュラス著『太平洋の防波堤/愛人ラマン』が刊行されていますが、アジア人の作品は、今回の2作品が初めてであり、この全集のなかでは、この巻のみです。
 そのうちのひとつ、現代中国の女性作家、残雪(ツァン・シュエ 1953-)の作品集『暗夜』は、7つの短編からできています。簡潔明瞭な文体に惹かれて読みつづけるうちに、物語の迷路に迷い込んでしまい、混乱と不条理の世界を経て、読後は呆然とする始末でした。

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2008年8月30日 (土)

伊藤和也さんの言葉

  険しい山岳を背景にした黄一色の菜の花畑で、左手に一輪の花をつまんだ幼い女の子が楽しそうに笑っています。乾し草の束を運ぶ少女や、大きく肥ったサツマイモを持ち上げて得意げな少年もいます。撮影者と被写体の子どもたちの間には、穏やかな信頼関係があることを窺わせる写真です。アフガニスタンで死亡した伊藤和也さんが撮影し、ペシャワール会が公表した300枚余の写真の一部をアサヒ.コムが掲載しています。

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2008年8月24日 (日)

楊逸著『時が滲む朝』

Photo この小説の表紙カバーの写真には、天安門広場とそこを通り過ぎる自転車の中国民衆たちが写っています。また帯には、「第139回芥川賞受賞作!」と大書され、「天安門事件前夜から北京五輪前夜まで 中国民主化勢力の青春と挫折」と記されています。これらから、本書が政治小説であることを強く予感させますが、私の関心は、中国からの越境作家が、日本の人や社会をどのように描写するのかということ、そして、来日20年という中国語を母語とする作家が、日本語で小説を書くスタイルと表現のあり方、といったことでした。

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2008年8月17日 (日)

夏休み・美しい蝶たちとの出会い

P1030759  先週土曜日からの夏休みが終わろうとしています。多忙な9日間でした。
 9日(土):おふくろと家内とともに、丸沼へ。
10日(日):9条の会記念講演会
11日(月):家と庭の掃除
12日(火):尾瀬ヶ原散策。夕方、孫2人と姉夫婦とその孫2人、計6人来る。
13日(水):孫たち4人と近くの公園で終日遊ぶ、夕方宝積寺で盆供養。
14日(木):長野県蓼科高原、御泉水自然園、白駒池を散策、蓼科泊。
15日(金):私の兄姉とその子供、孫の総勢15人が、わが家に集合。
16日(土):甘楽町雄川上流にて孫世代等10人と川遊び、昼は家で恒例の流しそうめん。
17日(日):昨日午後から今朝にかけ、それぞれ帰宅。

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2008年8月11日 (月)

9条の会・結成2周年の集い

Photo  昨日の午後、地元の「9条の会」・結成2周年の集いが、町の公民館でありました。世話人に名を連ねていますので、開会の1時間以上前に会場へ行き、机や椅子を並べたり資料を整理したりの手伝いをしました。日陰は涼しいといっても猛暑のなか、しかも群馬県内では全国高校総合文化祭が開催中で、人がどの程度集まるかどうか、世話人は少し心配。しかし開会の2時には、30人をこす町民の皆さんが集まってきました。

  

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2008年8月10日 (日)

東北のキリシタン遺跡を訪ねて

P1030534  去る6日(水)、岩手出張を機に、同県藤沢町大籠のキリシタン遺跡を訪ねました。東北のキリシタンといえば、慶長遣欧使節の支倉常長(はせくらつねなが)のことを、遠藤周作著『侍』(新潮文庫86年)で知っていた程度で、東北でのキリシタン殉教については、最近まで知りませんでした。
(写真は、大籠キリシタン殉教公園にある大籠殉教記念クルス館)

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2008年8月 3日 (日)

アブサロム、アブサロム !

Photo  アメリカ下院は29日、過去アメリカが行った奴隷制や隔離政策について謝罪する決議を初めて採択しました。このニュースをみて一瞬、おやっと思ったのですが、今日でもつづくアフリカ系住民への差別のなか、こうした決議すら未だなかったのですが、アフリカ系であるオバマ氏が大統領候補になるという歴史的な変化を背景に、あらためてアメリカ社会が、政治家たちを動かし、謝罪決議採択に至ったのだと、納得しました。
 日本の参院が、アイヌの人々を独自の言語・宗教・文化を持った日本列島の先住民族として認める決議をしたのは、今年の6月6日のことです。日常の生活では必ずしも、意識される機会の多くない民族差別の問題が、太平洋を挟んだ両国で期せずして、議会決議という形で再認識された形です。
 こんなとき、ウィリアム・フォークナー著『アブサロム アブサロム!』(河出書房新社 池澤夏樹編「世界文学全集Ⅰ-09 08.07刊)を読み、アメリカ南部最深部の歴史の真実を赤裸々に、見せ付けられました。

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2008年8月 2日 (土)

ヤン・ステーンがおもしろい

Photo  青磁の壺に活けられた何十種類もの花たちが、画面いっぱいに描かれています。蝶が二匹、上方の左右に、花の蜜を吸いにきています。右下のテーブルの上には、壺からこぼれ落ちた花とともに、小さな蜂がとまっています。花の細密描写と同様に、壺の紋様も細かく正確に描かれています。ピーター・ブリューゲルの次男、ヤン・ブリューゲル(父)の『青い花瓶の花束』(1608頃)。さすが、「花のブリューゲル」と呼ばれるだけの作品です。同人のもうひとつの作品『小作人見舞い』(1597頃)も展示されていましたが、人物画では父ブリューゲルには遠くおよびません。(国立新美術館で開催中の「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」より)

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