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この小説の表紙カバーの写真には、天安門広場とそこを通り過ぎる自転車の中国民衆たちが写っています。また帯には、「第139回芥川賞受賞作!」と大書され、「天安門事件前夜から北京五輪前夜まで 中国民主化勢力の青春と挫折」と記されています。これらから、本書が政治小説であることを強く予感させますが、私の関心は、中国からの越境作家が、日本の人や社会をどのように描写するのかということ、そして、来日20年という中国語を母語とする作家が、日本語で小説を書くスタイルと表現のあり方、といったことでした。
アメリカ下院は29日、過去アメリカが行った奴隷制や隔離政策について謝罪する決議を初めて採択しました。このニュースをみて一瞬、おやっと思ったのですが、今日でもつづくアフリカ系住民への差別のなか、こうした決議すら未だなかったのですが、アフリカ系であるオバマ氏が大統領候補になるという歴史的な変化を背景に、あらためてアメリカ社会が、政治家たちを動かし、謝罪決議採択に至ったのだと、納得しました。
日本の参院が、アイヌの人々を独自の言語・宗教・文化を持った日本列島の先住民族として認める決議をしたのは、今年の6月6日のことです。日常の生活では必ずしも、意識される機会の多くない民族差別の問題が、太平洋を挟んだ両国で期せずして、議会決議という形で再認識された形です。
こんなとき、ウィリアム・フォークナー著『アブサロム アブサロム!』(河出書房新社 池澤夏樹編「世界文学全集Ⅰ-09 08.07刊)を読み、アメリカ南部最深部の歴史の真実を赤裸々に、見せ付けられました。
青磁の壺に活けられた何十種類もの花たちが、画面いっぱいに描かれています。蝶が二匹、上方の左右に、花の蜜を吸いにきています。右下のテーブルの上には、壺からこぼれ落ちた花とともに、小さな蜂がとまっています。花の細密描写と同様に、壺の紋様も細かく正確に描かれています。ピーター・ブリューゲルの次男、ヤン・ブリューゲル(父)の『青い花瓶の花束』(1608頃)。さすが、「花のブリューゲル」と呼ばれるだけの作品です。同人のもうひとつの作品『小作人見舞い』(1597頃)も展示されていましたが、人物画では父ブリューゲルには遠くおよびません。(国立新美術館で開催中の「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」より)