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アメリカの金融危機が、急激な展開をみせています。9月15日、リーマンブラザーズが破産申請し、メリルリンチがバンカメに買収されました。17日、世界最大の保険会社AIGが破綻し政府資金の投入で実質的に国有化されました。さらに25日、米貯蓄貸付組合(S&L)最大手ワシントン・ミューチュアルが破綻。証券、保険から遂に銀行にまで危機が拡大し、いよいよアメリカ市民の財布を直撃する様相を呈してきました。
私の家に母(94歳)が来たのは昨年の8月でした。それから1年余りたちますが、この間のことは、折に触れこのブログにも書きました。母の介護のことを記録しておきたいとの個人的動機と、高齢者との共同生活についての報告が何らかの参考になれば、と考えてのことです。
バオ・ニン著『戦争の悲しみ』は、ヴェトナム戦争が生み出した戦争文学です。著者バオ・ニン(1952-)は69年、ハノイの高校卒業後ヴェトナム人民軍に入隊し、南ヴェトナムにおいて米軍やサイゴン政府軍との戦闘に従事しました。この小説は、著者本人の、青春の日々を奪われ人格を破壊されんとした戦争体験と、自己葛藤のなかで生きる意欲を取り戻し自己再生を図ってきた戦後体験が、深く影を落としています。
私にとってのヴェトナム文学は、この作品が初めてです。また、私にとっての従来の戦争文学は、全て過去の、つまり私の生まれる前の戦争を題材としたものでしたが、『戦争の悲しみ』は、自分と同時代の、しかも私と同世代(いくつか若い)の作家による作品であり、ヴェトナム反戦デモへ参加したことを思い出し、いままでの戦争文学にない読書経験をした感じがします。