« 新自由主義の終わりの始まり-労働政策をめぐって | トップページ | エルサ・モランテ著『アルトゥーロの島』 »

2008年10月19日 (日)

アメリカ大統領選挙のゆくえ

 久々のゆったりとした日曜日で、朝からネットを徘徊しています。月2回の割りで更新されている「加藤哲郎のネチズン・カレッジ」で、M.ポアチャ稿『オバマで世界は変わるのか-2008米大統領戦のゆくえ』が紹介されています。ポアチャは、スウェーデンに住む政治学者のようですが、詳しいプロフィールはわかりません。米大統領選は、2週間後に投票日を迎えますが、選挙前の今まさに、読む価値のある論文だと、思います。

 ばじめに筆者は、大統領選挙を報じるアメリカのマスコミが、黒人と女性が民主党の大統領候補として認められたことを、アメリカ民主主義の成熟度を示すものとして持ち上げていることを、厳しく批判します。「一国の指導者を選ぶ際に、真に着目されねばならないのは、性別や肌の色といった「アイデンティティ」ではなく、彼らが提唱する政治政策であり、それがどう国民と国内政治、ひいては世界に影響を与えるのかということのはずである」。
 そして、民主党のオバマ候補が、指名確定と同時に、「言辞を一転させ、急に右寄りスタンスを深めているようにみえる」と指摘します。それは、イスラエル・イラン政策や死刑制度存続あるいはスパイ法案への対応においてみられる、としています。
 オバマの対外政策について、とりわけイラク・アフガニスタンの戦争について、「オバマが言う『変革』とは、イラク・アフガニスタン戦争を終結させることも、米軍事主義を終焉させることも意図してはいない。オバマが11月の大統領選挙に勝利しても、この5年間続いた殺戮と占領が終わるという見込みは薄いと言わざるを得ない」と明快に断じます。
 また、国内政策、金融危機や失業問題については、巨額の政治資金をビッグ・ビジネスとウォール・ストリートから得ているとして、「彼が絶え間なく叫ぶ『変革』という公約は、巨大企業とウォール街の利益システムの根本的な変革という経済プログラムとは何らの関連はない」とし、また「米企業とウォール・ストリートの利益と・・・一般労働者の利益を調和させることは不可能である。もしオバマがホワイト・ハウス入りするとしても、・・・ビッグ・ビジネスを擁護して、深まる米国の金融危機を一般労働者に肩代わりさせるだけである」とこちらも極めて厳しい見方をしています。
 最後に筆者は、「オバマで世界が変わるのか?」と問い、次のように答えます。「米支配者層は、オバマは一般労働者の生活状況を改善するためではなく、米国の金融資本の世界的な利益を安全に確保するための効果的な大きな変化をもたらすのに利用できる媒体であると見なしている。・・・オバマが大統領に就任することは、これまでの戦争と抑圧の米国政策からの根本的な決別を意味するわけではなく、むしろそれを新たな形態で継続するということである」。
 M.ポアチャ氏のオバマ評は、愚昧なブッシュ現政権からの『変革』をオバマ候補に期待している世界中の多くの人々に、冷や水をかけるものです。はたしてポアチャの分析が、どの程度妥当なのか。ポスト・ブッシュにおいても決定的な影響力を持ち続けるアメリカ大統領の選挙であるだけに、来月末にはあるとされているわが国の衆院選同様に、注視していきたい。
  その日本の衆院選挙について、「世界」11月号が『政権交代選挙へ-経済危機のなかの選挙』と題する特集を組んでいます。なかでも、山口二郎稿『新自由主義の終焉と政権選択-世界政治の大転換の中で』と金子勝稿『経済崩壊か、新しい成長軌道か-世界金融危機のもとでの選択』の二つの論文が面白かった。こちらも、選挙前に一度読んでおくことをおすすめしたい。
 

« 新自由主義の終わりの始まり-労働政策をめぐって | トップページ | エルサ・モランテ著『アルトゥーロの島』 »

コメント

■P.F.ドラッカーの『ネクスト・ソサエティー』―ポスト金融危機を生き抜く知恵
http://yutakarlson.blogspot.com/2008/10/pf.html
こんにちは。私のブログでは、金融危機後「健全な社会」を作り出すことが、健全な実体経済を取り戻す最短の道であることを訴えてきました。しかし、多くの人の頭の中「経済・金融」というキーワードで埋め尽くされ、「社会」など何も関係のないことと思っているかのようです。そんなことはありません。私のブログではドラッカーの「ネクスト・ソサエティー」について取り上げてみました。この中でドラッカー氏は、すでに先進諸国の「社会」はそれまでの社会とは全く違う「異質な社会」に突入していることを強調しています。一方ではあまり関係ないように見える、ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏のここ数年の辛らつな「ブッシュ批判」は、形こそ違え結局は「健全な社会」を作くるどころか、壊してきたことに対する批判だったと思います。結局は、クルーグマン氏も「健全な社会」を作りだすべきことを主張していたのだと思います。いまこそ、異質な社会に対応するためのインフラ革新と、システム革新が必要不可欠です。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/155294/42836029

この記事へのトラックバック一覧です: アメリカ大統領選挙のゆくえ:

» 米大統領選 [ルル日記]
米大統領選 オバマ氏を支持 パウエル前国務長官 [続きを読む]

« 新自由主義の終わりの始まり-労働政策をめぐって | トップページ | エルサ・モランテ著『アルトゥーロの島』 »