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2008年11月 3日 (月)

沖縄戦「集団自決」(強制集団死)裁判 控訴審判決

 「集団自決に隊長命令はなく、名誉を傷つれられた」として旧日本軍の守備隊長らが、『沖縄ノート』の著者大江健三郎さんと出版元の岩波書店に出版差し止めと慰謝料を求めた裁判で、大阪高裁は先月31日、原告敗訴の一審判決を支持して、控訴を棄却しました。このニュースを受け、新聞社はいっせいに社説を掲げました。その多くが、「軍の深い関与が明白に」(沖縄タイムス)「地元納得の妥当判決」(琉球新報)「あの検定の異常さを思う」(朝日)「言論の萎縮に警鐘を鳴らした」(毎日)などと、判決を積極的に評価しました。一方右派紙は、「検定の立場は維持すべき」(読売)「判決と歴史の真実は別だ」(産経)と判決を批判しました。

 私は、控訴審判決を評価しつつも、判決文のなかで裁判長が「隊長が直接住民に命令した事実に限れば、その有無は断定できず、真実性の証明があるとはいえない」としていることに、強い違和感を感じぜざるを得ません。「自決命令書」という文書による証拠がなければ、「真実性の証明」があるとはいえないのでしょうか。
 私は昨年春、文科省検定で高校日本史教科書から「集団自決」の軍「強制」が削除されたことに抗議の気持ちを込めて、ブログに記事を書きました。このなかで、「集団自決」(強制集団死)の体験者の一人、金城重明(当時16歳)さんの手記を引用し、日本軍の強制の下に「集団自決」(強制集団死)がなされたことを、自ら学びました。また、この歴史の真実を歪曲した教科書検定に対する抗議運動が高まるなか、これまで堅く口を閉ざしていた体験者たちが証言を始め、「集団自決」が日本軍の強制による集団死であったことが、あらためて明らかとなりました。これらの貴重な証言は、謝花直美著『証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか』(岩波新書 08.2刊)に、詳細が報告されています。
 私が違和感をもった判決部分―「隊長による直接命令の有無は断定できず」―にたいして、敗訴した原告団はすがる思いで飛びつき、「決定的な勝利だといって過言ではありません」と強がっています。産経新聞の「歴史的事実として集団自決が旧日本軍の隊長命令だったと確定したのではない。訴訟の勝ち負けと歴史の真実は、全く別の問題である」という主張とまったく同じです。争点を「隊長命令の有無」に矮小化し、その物的証拠がないことをもって、「日本軍による強制」はなかったと主張します。姑息で狡猾な主張です。
 謝花記者の報告や金城重明さんの証言から、「集団自決」が旧日本軍による強制であったことは、明らかです。島における最高権力者は、守備隊長でした。隊長以外の誰が、このように重大な命令を発することができたのでしょうか。その隊長の一人は、朝鮮人「慰安婦」と一緒に米軍の捕虜になり、捕虜になってから別の島の隊長に投降の説得まで行った、との証言があります。住民には絶対に投降を許さなかった人です。(國森康弘稿『元日本兵は何を語ったか―沖縄戦の空白』(「世界」臨時増刊『沖縄戦と「集団自決」』所収 08.1刊)。沖縄の人々の憤怒の思いが、おさまるときが来るのでしょうか。
 この控訴審判決を伝える同じ新聞紙上に、田母神俊雄・航空幕僚長の、日本の植民地支配と侵略行為を正当化した論文応募による更迭の記事が出ています。歴史修正主義者=靖国原理主義者たちの、執拗な「歴史の記憶」に対するテロリズムは、止むことがありません。

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