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2008年11月16日 (日)

金融危機・世界恐慌への道

 ワシントンで開かれていた金融サミット(G20)が15日、宣言を採択し閉幕しました。宣言では、世界同時不況回避のための国際協調や金融市場の改革などがうたわれ同時に、各国の景気浮揚のための財政発動を求めています。はたして、世界恐慌は回避できるのでしょうか。
 『世界』12月号は、「崖っぷちに立つ世界 処方箋はあるか?」と題した特集を組み、世界金融危機の背景と世界恐慌を回避する道筋を探っています。

 伊東光晴稿『世界金融危機から同時不況へ』は、サブプライム・ローンの軌跡をたどり、金融危機の原因に迫ります。ノートへのメモとして記しておきます。
 第一期 サブプライム前史(1980年代)
 筆者は、サブプライム・ローンの前史として、1980年代の「サブプライム・レンダー、略奪的中古車ローン」をあげます。サブプライム・レンダーは、「信用度が低い、通常の融資を受けられない人たちに中古車ローンを提供しょうというもの」です。それは極めて金利の高い、他人を食い物にする略奪的ローンです。ローン返済不能時の保証措置が、担保物件である自動車そのものだけ、というノンリコース・ローンが特徴。。ローン返済の延滞50日以上で、レンダー(業者)は車を回収します。
 「この種の業者は、リスクの高い顧客に対してはローンが完済されることを当初から予定していない。途中回収で成り立つように、中古車価格は高く設定し、それなりの金利を付している」。
 第二期 すき間産業としてのサブプライム住宅ローンの成功(1990年代)
 サブプライム住宅ローンの成功事例として、1996年に全米一の報酬を得たCEO(約130億円)ローレンス・コスのビジネスモデルが紹介されます。①顧客対象を、住宅ローンを受けられないがリスクの少ない人に絞った。②ローン申し込みに対して、クレジット会社と自動車ディーラーからの過去の信用データーで、即決した。③金利は、通常の2,3%高。④期間30年、85%融資。⑤通常価格の5,60%の廉価な住宅の提供。⑥融資金調達は、ローン債権の証券化による。
 「90年代のサブプライム住宅ローンは略奪的ローンではなく、これによって低所得者が自分の住宅を持つことができた。経営者もローレンス・コスを生むほど順調であった」。
 第三期 ウォール街の参入とバブル崩壊(2000~2007年7月)
  ここでリーマン・ブラザーズが登場し、ベアー・スターンズ、メリルリンチが後を追います。いずれもバブル崩壊後、倒産しました。
 リーマン(など投資銀行)のやったこと。①住宅ローン会社が行ったローンを集めて証券化(債務担保証券CDO)し、販売したこと。②CDOを売るために、リーマンによる保証行為、債務破綻補填証券CDSの発行。リーマン倒産によって、このCDSはジャンク(くず)債権となり、総額4000億ドルの90%が失われ、保有する金融機関は大打撃となりました。
 これら投資銀行につづき、保険会社AIGと格付け会社S&Pが登場します。AIGは、住宅ローン提供会社に対し、借入金比率80%以上のローンに対して保険を提供。S&Pは、通常ローン対象外の頭金部分に対するローン(ピギー・バック・ローン)を提供しました。結局、「頭金なし全額ローン」で住宅を手に入れることができるようになりました。
 このようにして「ウォール街の参入は、住宅ローンの条件を緩め、住宅需要を増し、住宅価格の上昇をもたらし」ました。、つまり、住宅バブルが出現したのです。こうしたなかで、サブプライム住宅ローンが、成功した90年代のそれとは異なり、80年代の略奪的ローンが復活します。顧客拡大のために、より所得の低い層へ顧客を移さざるを得なくなりました。
 略奪的ローンの事例その1。2,3年の固定金利、その後変動金利となり、10%、12%にはね上がる。「顧客は当面の低い金利に惹かれてローンを申し込む。将来どうなるかという不安に対しては、住宅価格の上昇傾向を説明し、値上がりで相殺されると説明する」。
 事例2 キャピタルゲインの所得化。つまり、住宅の市場価格が上がったことによって、資産の値上がり利益(キャピタルゲイン)を得ている。それはあくまで計算上のものであって、現金化されているわけではない。これを実現し、現金化させるのがローンの借り換え。会社は、「値上げ-借り換え」によって得られる現金を餌に、ローンの増大を図ります。
 「サブプライム住宅ローンはこうして増大し、リスクを増大させ、ローン証券を劣化させていった。このメカニズムが行き詰るのは、もちろん住宅価格の下落である。それが07年に訪れた」のです。
 ここまではアメリカ国内の問題です。しかし、サブプライム問題は、世界に波及しました。何故なのか?ここに登場するのが、アメリカの格付け会社です。トリプルA(AAA、Aaa 最も安全な債権)と格付けされたリーマンの債務担保証券を買ったヨーロッパの銀行が、リーマンの破産とともに、その証券をゴミとしてしまいました。この背景には、格付ける側と格付けされる側との間に共通の利益があったことが、示唆されています。とりわけ住宅ローン債務担保証券CDOの手数料は、0.12%、「10億ドルのCDOならば、120万ドルの収入」、つまり極めて魅力的だったわけです。公正な格付けができたとは言いがたい。しかも、現実の格付けは、過去5年間の実績分析に基づいているという。そして「2000年以前の5年間のデーターをもとにして将来を推計すれば、リスクは極めて低く、優良証券としての格付けが可能であ」り、かくしてトリプルAが量産され、ヨーロッパや日本の銀行や保険会社の金融界が、サブプライムローンの破綻の影響をもろに受けることになったのです。
 筆者は、金融破綻はサブプライム・ローンを超えて起こっていると警告します。アメリカ住宅公社の信用不安です。フレディーマック(米連邦住宅貸付抵当公社)とファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)の2社です。両社とも、最優遇金利を受けている所得の高い層を対象にしており、この層にも信用不安が生じていることが、注目されます。「プライム・ローンに破綻が生まれているということは大変なことで・・・ローンの総額がサブプライム・ローンに比べはるかに大きい」のです。まさに「アメリカからの金融不安は、サブプライム・ローン問題を超えて進行し出している」のです。
 筆者の伊東氏は、論稿を終えるにあたり、アメリカ的金融方式と従来のドイツ・日本金融方式を比較し、後者の優越性を指摘します。アメリカのそれは直接金融方式といい、「短期資金の供給は行っても設備資金の供給のような業務は行わず、企業は長期資金を証券市場で調達する。その方法は、株式の発行か、あるいは社債の発行か、債権の証券化」です。これに対して日本の場合は、「銀行は多くの人々から預金を集め、それを原資として企業等に短期資金だけではなく長期資金を提供してきた」ので、株や社債の発行で資金調達もしますが、日本企業の多くが銀行からの融資に頼ってきた間接金融方式です。銀行は融資にあたっては、みずから経営内容・所得・資産を調査し、担保をとります。格付け会社は不要です。こうして「不特定多数から預金を預かる銀行は、大きな社会的責任を担っており、リスク排除と融資への社会的責任をもつている」のです。このように「長期の視点から、融資の社会的責任の上に立つ間接金融方式を見るとき、社会の安定性の視点からは間接金融のほうが優れていると考えざるを得ない。80年代以降、我が国の間接金融方式をアメリカの直接金融方式に近づけようとした構造改革は再考を要するのである」と明快な結論に至ります。

 ローンの証券化のメカニズムなど金融の専門的なことについては、なかなか理解しがたく、従って伊東論文を十分に読みこなせたとはいえません。しかし、サブプライム・ローンの破綻にいたる軌跡と金融危機の原因解明は明快で、今後、金融危機・世界同時不況の論説を読んでいく上で、大変参考になると思います。

 

 
  

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