おゆうぎ会とボッカッチョ
腰が痛くて眠れなかったと、お袋はややむくんだ不機嫌な顔で訴えました。ここしばらくは数日おきに、腰痛で苦しんでいます。この夏、医者から末期の胃がんだと知らされたときには、12月の95歳の誕生日が迎えられればと願ったのですが、幸い来週末にその日がやってきます。腰痛がたんなる腰の痛みであることを祈るばかりです。
4才の孫が通う保育園の「おゆうぎ会」へ誘ったら笑顔がもどり、是非行ってみたいとのことで、家内ともども、甘楽町文化会館へ行きました。
幼児たちは、舞台いっぱいに跳びはねながら、嬉々として真剣に、歌とおどりを演じていました。客席からは、笑いと暖かい拍手が起こります。その姿はみな愛らしく、微笑ましく、愉快そのものです。保育士のみなさんも、子供たちと一緒になって、楽しんでいます。客席を埋めた親と祖父母たちは、とても幸せな半日を過ごすことができました。大きな都会では、保育園や保育所の不足によって、幼児が待機を余儀なくさせられているということですが、この町では、要件を満たした希望児童は、全員入園することができます。しかも、「美しいものを見て美しいと感じることのできる子」という保育目標を掲げていることも、素晴らしい。
幼児たちの歌とおどりに堪能してロビーへ出たところ、西洋人のブロンズ胸像がありました。ジュヴァンニ・ボッカッチョ。イタリア・ルネサンス期の巨匠で『デカメロン』の作者。何でボッカッチョが、ここに?
甘楽町のホームページを見てわかりました。当町は、イタリア・トスカーナ地方のチェルタルド市と姉妹都市となっており、25年間、交流を続けているということです。ボッカッチョは、このチェルタルド市生まれ。数年前、フィレンツェへ旅するのにあたって読んだイタリアの小説の中に、『デカメロン』がありました。14世紀のフィレンツェで、ペストの猛威から森の館に逃れた7人の貴婦人と3人の貴公子が、10日間に語りついだ100話の短編物語。「世界文学史上不滅の古典」と文庫版表紙裏に書かれていますが、結構きわどいがカラッとした、滑稽な男女譚です。ブロンズの胸像を眺めながら、あのエッチな物語を書いたのはこの男なのかと、しみじみと感じ入りました。
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