村のお付き合い、そして経済危機
今朝は早くから、同じ区の仲間とともに、耕作放棄された田圃の雑草刈りをしました。地主は東京に住んでいるとのことですが、数年前に挙家離村したとのこと。この仲間は、ホタルの会と称して、当地にホタルを呼び戻そうと夢みる人たちですが、今朝は6人での作業でした。耕作放棄されてまだ数年しかたっていないため、セイタカアワダチソウが繁茂しているくらいで、柳の木が生えだした他の耕作放棄田と比べると、作業は簡単でした。ため池と水路を整備して、カワニナの生育環境を整え、ホタルを呼び込もうととの作戦。はたして、ホタルの舞う日は、何時のことか。
昨日に引き続き、「世界」2月号を読みます。もうひとつの特集『経済危機-どこに対案があるか』の2,3の論稿に触れてみたい。最初に、テレビでも活躍中の寺島実郎さんの連載記事『脳力のレッスン・特別篇』を読みます。表題は、『直面する危機の本質と日本の針路』。
まず、「直面する世界金融危機(と)世界同時不況は、我々が歴史的な構造転換期にあることを示すもの」です。では、この現代の危機の本質は何か?筆者は、二重構造での歴史的パラダイム(思考の枠組み)の転換が進行している、といいます。ひとつは、「冷戦後の米国の一極支配」の終焉。他は、「第2次大戦後の米国中心の『ブレトンウッズ体制』の行き詰まり」。前者は、89年ベルリンの壁崩壊と91年ソ連邦崩壊後の「唯一の超大国たるアメリカ」という世界観の終わりを意味し、後者は、「IMF・世界銀行を中核とする大戦後の世界金融システム」が機能不全に陥ったことを意味します。日本は戦後、この二重構造に縛られ、そのなかでの平和と繁栄を享受してきました。その二重構造が崩壊し、転換を迫られているのです。
そこで筆者は立ちどまり、資本主義のあり方を問い、マックス・ウェーバーと渋沢栄一の思想へと思いを馳せます。ウェーバーからは「利潤追求の背後にある倫理的基盤」を見い出し、渋沢からは「日本の資本主義にも、その原点において、儒教的な規範性が強く存在し、『質素・倹約・布施・報徳・経世済民』などの価値を重んずる視座があった」ことを学びます。そして、「日本経済が世界に評価されているものを直視するならば、あくまでも産業力とそれを支える技術力に他ならないことに気づく。この国は、真面目にモノを作ることにこだわり続けてきた『育てる資本主義』の国であり、マネーゲームで付加価値を生み出した『売りぬく資本主義』ではない」と結論づけます。
そして新しい世界秩序を構想していく場合、「国際連帯税構想」が示唆的な試みだとします。例えば、「国境を越えたマネーゲーム(為替の取引)に対して広く薄く課税して、国際機関がその税源を元に、途上国へ環境技術を移転する費用に充当する」といったアイデアです。また、日本経済の構想では、海洋国家である利点を生かして、海洋資源の開発によるエネルギー・食料・資源の確保を目指すべきだと主張します。
最後に筆者の寺島実郎さんは、すべての日本人に向けて、次のような熱いメッセージを贈ります。
「産業国家として見事な国造りに実績を挙げ、筋道の通った平和外交を展開する国としての自画像を踏み固め(よう)」。
寺島さんの評論は、骨太でしかもわかりやすく、論理の一貫性が信頼感を高めます。金子勝さんとともに、ますますの活躍を期待します。
山家(やんべ)悠紀夫稿『日本経済、どこへ向かうべきか』には、今日の金融・経済危機に至る好景気と大企業の高収益の下での、国民多数の「低下した生活水準、増加した低所得者」についてのデーターが掲載されていますので、メモしておきます。
1.総需要(最終需要)-景気は拡大した
02年1-3月期(景気の谷)548兆円、07年10-12月期(景気の山)626兆円
2.雇用者報酬(賃金+雇主負担の社会保険料)-賃金は増えなかった
02年1-3月期 268兆円、07年10-12月期 266兆円
3.勤労者家計-生活水準が下がった
07/97比 収 入 △11.4%・支 出 △9.7%
支出内訳 食△12.1%・衣△26.9%・住△10.5%
医療・保険+12.6%・交通・通信+16.3%
4.正・非正社員数-非正社員が増加した
97年 正社員3812万人・77%、非正社員1152万人・23%
08年 正社員3385万人・66%、非正社員1779万人・34%
5.所得-低所得者が増加した
97⇒07 200万円以下 814万人・18%⇒1032万人・23%
300万円以下 1457万人・32%⇒1751万人・39%
6.貯蓄-無貯蓄世帯が増加
97⇒08 10%⇒22%
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