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年越し派遣村は、自動車や電機業界などによる大量の派遣切りによって、職と住を奪われ生命の危機にすら陥りそうだった人びとを救うために、NGOと労働組合が緊急避難的につくりだした、已むに已まれぬ駆け込み寺的な取り組みでした。しかし派遣村は、メディアの積極的な取材活動等も手伝って、日本の社会に大きな共感の輪を広げ、その後の派遣労働のあり方の論争に、強い影響力を発揮しています。
今週も、トヨタなど自動車各社とパナソニック等電機各社の、09年3月期決算の大幅赤字見通しが、報ぜられました。自動車、電機等、輸出に依存する企業が総崩れ状態です。このことが、非正規労働者の解雇・契約切れと中小下請け企業の受注カットを意味していることは、云うまでもありません。アメリカに端を発した世界金融危機は、実体経済を直撃し、世界同時不況の嵐が、世界中の労働者や中小企業を、吹き飛ばしてしまう勢いです。
1989年、世界は激動の中にありました。6月4日の天安門事件は、中国の民主化運動を挫折させ、11月11日のベルリンの壁の崩壊は、チェコ・スロヴァキアのビロード革命からルーマニアのチャウシェスク政権の崩壊を経て、2年後のソヴィエト連邦の崩壊に一直線に繋がっていきました。国内では、昭和天皇が亡くなり、元号が平成となりました。美空ひばりや手塚治が亡くなったのも、この年でした。12月29日、東証大納会は、日経平均株価38,915円の史上最高値を記録し、年明け以降株価は下がり続け、バブル崩壊へと突きすすみます。まさに、ひとつの時代の終わりをつげる年だったといえます。
その年の2月7日、長男が亡くなりました。丁度、20年前のことです。1989年は、わが家にとっては、決して忘れることのできない年です。
「その星は、北斗七星の杓の柄の二番目に当たる開陽星脇に、小さく見える星だった・・・その小星に祈れば、児の病は必ず治ると信じられ」た、と著者はこの小説の最後に書き記しています。この「星」は、大坂にあって貧しい人びとに無償の医療を施し、世に評判も高く、生涯あばら家暮らしを続けた町医者、北山寿安のこと。この寿安は医者となる前に、幕藩体制を揺るがす大きな事件を経験しました。
飯嶋和一著『出星前夜』(小学館 08.8刊)は、島原の乱(1637~38年)を題材に、キリシタンを中心とした蜂起勢と幕府討伐軍の内部にわけいり、それぞれの陣営内で人びとの織り成す人間模様を、見事に描き出しました。