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2009年2月 8日 (日)

水野和夫著『金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉』

 今週も、トヨタなど自動車各社とパナソニック等電機各社の、09年3月期決算の大幅赤字見通しが、報ぜられました。自動車、電機等、輸出に依存する企業が総崩れ状態です。このことが、非正規労働者の解雇・契約切れと中小下請け企業の受注カットを意味していることは、云うまでもありません。アメリカに端を発した世界金融危機は、実体経済を直撃し、世界同時不況の嵐が、世界中の労働者や中小企業を、吹き飛ばしてしまう勢いです。

 約30年の間証券会社に在籍してきたエコノミストの水野和夫さんは、今回の金融危機を「16世紀の資本主義誕生以来の最大の危機」だとしています(水野和夫著『金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉』 NHK出版・生活新書08.12刊)。何故ならば、資本主義は誕生以来、資本と国家と国民の利害は一致していたのですが、サブプライムローン問題で象徴される出来事は、資本が国家と国民に対して離縁状を叩きつけ、三位一体の関係を崩したものだ、というわけです。この危機は、国家と国民にとっての危機であって、資本にとっては必ずしも危機ではない。それは、どういうことでしょうか。衝撃的な数字が紹介されています。
 95年63.9兆㌦→07年10月187.2兆㌦→08年11月165.8兆㌦
 これは、世界の金融資産(株式時価総額+債券発行残高+預金)の推移を表したものです。つまり95年以降、世界経済のグローバル化にともない、金融資産は、最大時の07年10月で123.3兆㌦(日本円で1京2330兆円・100円/㌦として)増加し、何と3倍近くになりました。驚くべきは、リーマンショック後の株価暴落あとの08年11月でもなお、95年対比で、101.9兆㌦(1京円超)も金融資産が増加しており、資本の側の損失はなかったというわけです。したたかなり、資本!
 この間の実態経済(名目GDP)は、次のような地道な増加を示しました。
 95年29.5兆㌦→07年54.3兆㌦→08年60.1兆㌦
 
金融経済が実体経済を圧倒していることが、一目瞭然としています。
 この新書では、このほか、「アメリカ金融帝国」が誕生し、サブプライム問題が発生した背景と歴史が、わかりやすく解説されています。また、「アメリカ金融帝国」終焉後の世界が向かっていくだろう方向を予測し、日本経済の生き残る道を探っています。お奨めの新書です。

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コメント

16世紀以来の危機とか、三位一体の崩壊とか、訳のわからない論理ではなく、純粋に資本主義下で繰り返し発生するバブルの崩壊。証券化の手法で信用乗数が大きかった故に信用収縮の度合いが厳しい状態になっているだけです。

冷静に分析・判断しないと適切な対応策は導き出せません。

日本企業は国内外の有効需要に適切に対応することです。まず有効需要を創出できるのは政府=財政支出、次に必ず世界的な民間需要が出てきます。米国も他国に遅れて出てくるわけで、需要がなくなる訳ではありませんし。資本主義は崩壊していないので。

また新自由主義ではなく市場原理主義が崩壊したというのが正確でしょう。米国を初め世界的に一定の規制強化がなされ、再び金融ビジネス・市場は拡大成長するのです。

売らんがための論理、には要注意かと。

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