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2009年3月29日 (日)

月刊誌の休刊・「世界」・韓国併合100年

   昨年から今年にかけて月刊雑誌の休刊が相次ぎました。評論を主体とした総合雑誌では、「月刊現代」(講談社)「諸君」(文芸春秋社)「論座」(朝日新聞社)などです。左右の立場の違いはあれ、各時代の論壇の一角を占めていた代表的な媒体でした。いずれも、販売部数の低迷と広告収入の減少による経営不振が、原因とされています。新聞社やテレビ局などのマス・メディアの経営不振も伝えられているなか、これら月刊雑誌の休刊は大変気になるところです。

 ただ私は、これら3誌についての購読経験がなく、それらの休刊に何ら感慨を覚えるものではありません。私は20代はじめから、「世界」(岩波書店)と「展望」(筑摩書房)の2誌を併読してきましたが、後者が廃刊されて以降は、「世界」のみを40年間にわたり読み続けてきました。「世界」は以前、地方都市の大型書店では手に入りづらかったのですが、最近では、平積みにされている書店も見かけることが多くなりました。休刊・廃刊のつづく月刊誌のなかで、「世界」が今後とも、健闘し続けていくことを、心から願うものです。
 「世界」は、「1945年末、戦争に対する反省に基づいて創刊された。編集にあたっての最大課題は、まず世界の平和の実現であり、日本の民主化であり、続いて核の廃絶であり、アジアの人々との和解・連帯であった」と編集部は書いています(「世界」編集部『朝鮮問題に関する本誌の報道について』)。つまり月刊誌「世界」は、日本国憲法誕生の前年に創刊され、憲法が日本と世界の人びとに誓約し宣言した理想の実現のために、編集され続けてきたのです。最高裁判所が憲法の番人であることをエスケープしている現在、憲法を護るために、メディアの役割は今後一層増していくだろうと思います。「世界」の役割は、それだけ大きい。とりわけ私が「世界」から学び期待しているのは、「アジアの人々との和解・連帯」についての取り組みです。1970年代から80年代にかけて長期連載されたT.K.生稿『韓国からの通信』は、韓国の民主化運動を日本と世界の人びとに知らせ、その結果、支援の輪は世界に広がり、過酷な状況下で民主化にとりくむ韓国の人びとを、大いに勇気づけました。また「世界」は、日本の植民地支配と戦争責任について、休むことなく執拗に追い求め、日本人が世代を越えて戦争の真実を記憶しつづけていくために、大きな役割を果たしてきました。NHKのETV特集などとともに、数少ない貴重な取り組みのひとつです。
 現在、世界同時不況の克服のために、これまでの米国に偏在した政治・経済政策を変革し、アジア諸国との連帯のなかで日本の未来を構築していこうとする意見が、徐々に世論形成されつつあります。東アジアの地にEUのような地域連合を結成しょうという論議も、真剣に取り上げられ始めました。しかし私は、この論議の大前提に、韓国・朝鮮および中国などとの歴史的な「和解」がなければ、それは絵に描いたもちになると思います。では、韓国・朝鮮や中国の人びととの和解は、どのようにすれば叶えられるのでしょうか。
 歴史学者の和田春樹さんが、「世界」4月号に、『韓国併合100年と日本 何をなすべきか』と題した論文を寄稿されています。和田さんは一貫して、日本と韓国・朝鮮との和解と連帯について発言し、行動してきた人です。
 和田さんは、2010年に韓国併合100年を迎えるにあたり、米国議会が1993年11月、ハワイ王国転覆100年の謝罪決議を採択したことに注目します。決議は、先住ハワイ人への謝罪、女王の抗議声明の全文引用、歴史過程の認識等を明確に打ち出し、米国と先住ハワイ人との和解を支持する、と紹介しています。そして和田さんは、「この決議は日本人にとって韓国併合100年に対してどのような態度をとるべきかを考えさせてくれるよき模範である」として「併合100年に際しては、国会決議、総理談話などで、(村山談話よりも)一段と進んだ歴史認識が示されるのがのぞましい。そのさい植民地支配が朝鮮民族の意思に反して強制されたものであることが明記されることが必要」だと主張します。そしてこの決議とともに、2010年に実現されるべき二つの課題があげられます。第一に、日朝国交正常化の決定的な前進を果たすこと。第二は、独島=竹島問題の解決をはかること。このほか、慰安婦問題や強制動員労働問題、天皇皇后のソウル訪問なども、解決すべき重要な課題として挙げています。これらはすべて、具体的な政治的課題であり困難ではあっても解決可能なテーマです。
 私は、半年内に必ずある総選挙において、アジアとの連帯と共同をうたう政党は是非、和田提案をマニフェストに書き込み、2010年の韓国併合100年を契機に、近隣諸国との歴史的和解の一歩を踏み出すことを、熱望します。政治が決定的な役割を果たした前例を、「世界」4月号のもうひとつの論考、佐藤健生稿『記憶を未来につなぐ責任-ドイツ戦後補償の中間総括』が取り上げています。ドイツの「記憶・責任・未来」財団の実現です。佐藤氏によれば、「この財団は、ドイツの戦後補償にとって最後でかつ最大の課題とされたナチ時代の強制労働者に対する補償に取り組んだもの」です。1998年秋の連邦議会選挙にあたり、社会民主党と緑の党は、この基金実現を政策上合意します。選挙の結果、コール政権に代わって社会民主党と緑の党によるシュレーダー政権が誕生しました。この政権交代が、「記憶・責任・未来」財団の実現に決定的な意味をもちました。詳細は是非、佐藤論文を読んでいただきたいのですが、私は、ドイツの政党が歴史的和解の先導役を務めたことを、感動と羨望の入り交じった気持ちでみつめつつ、日本の民主主義もきっと、さほど遠くない未来に、ドイツ程度に成熟することを願います。
 

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