ドキュメンタリー映画『いのちの作法』
吹雪く雪道を、病人を乗せた箱橇がいきます。病院の帰りには、冷たいむくろを乗せてくることがありました。「ああ、また箱橇がいく・・・」。深澤晟雄村長以前の旧沢内村をイメージするとき、どうしてもこの箱橇のシーンが、眼に浮かびます。
しかし、この深澤村長の沢内「生命行政」を継いだ人たちは、「箱橇」のイメージを見事に転換させてしまいました。地元温泉街の雪祭りの行事のひとつとして、特別養護老人ホームの老人たちを「雪見橇」に乗せ、雪景色を楽しんでしまおう、というのです。カメラは、ガラスに囲まれた居心地のよさそうな箱橇に、暖房用の湯たんぽを積み込む若者たちを映しだします。橇に乗ったふたりのおばあちゃんの、幸せそうな顔が、印象的でした。
ドキュメンタリー映画『いのちの作法-沢内「生命行政」を継ぐ者たち-』(小池征人監督 2008公開)は、深澤村長の沢内「生命行政」そのものではなく、現在それを引き継いでいる人びとのドキュメンタリー映画です。深澤村長によって革命的に転換された「住民の生命を守る」ための行政は、町行政に引き継がれるとともに、そこに住む人びとによって、確実に継承されています。映画は、知的障害者授産施設の、四季折々の農作物をつめた「ふるさと宅急便」作業の模様や、東京から児童養護施設の少年・少女たちを迎えての夏期合宿の様子が、美しい岩手の自然を背景に映しだされます。また、菊地武雄さんや及川和男さんの著書に登場していた懐かしい人たちが、老いてなお活躍されているのも、うれしいニュースです。このドキュメンタリーを見て、ここにこそ真実の「美しい日本」があると、しみじみと思いました。
現在この映画とは別に、大澤豊監督による『日本の青空Ⅱ~いのちの山河~』が、今年6月完成に向けて、撮影が大詰めを迎えています。こちらは、深澤晟雄村長と村民たちが、生命行政をつくって行く奮闘の日々を描く劇映画です。こちらも期待したい。
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