自性寺焼・里秋窯を訪ねる
隣接する安中市に、梅林で有名な秋間の里があります。その小高い丘陵の一角に、自性寺焼・里秋窯があります。釉薬を使わない焼締めの陶器に魅せられ、これまでも何度か訪ねたことがありますが、今回は、ぽっと胸に穴が開いたような連休の初めの日に、再訪しました。備前焼や志戸呂焼(静岡・島田)と同じように、自然釉の味わいは、静かで落ち着いており、気に入りの陶器のひとつです。
この地は、古くは奈良時代からの須恵器の産地であり、江戸中期から明治の終わり頃までは、自性寺焼として徳利類やすり鉢・こね鉢などの日常用品が作成されていました。しかし、明治末に窯は閉じられ、その後は途絶えてしまいました。1979年夏、現在の里秋窯の主人青木昇さんが、古老や窯跡を訪ねて研究を重ねた結果ついに、自性寺焼を復興させました。青木さんのこの復興にかける情熱とこの地への愛情に、その作品のすばらしさ同様に、いつも感心し敬服します。私の自宅から30分という至近距離のところに、このような窯元があることに、ささやかな喜びを感じます。 登り窯を見せていただきました。幅2.5m・長さ9mの大きな窯です。この5段からなる窯を一杯にするためには、作品作りに3ヶ月かかります。そして、窯焚きに7昼夜、冷却に7日間おいて窯を開けるそうです。松薪は5分おきに投入し、7日間で10トン消費します。青木さんの奥さんによれば、窯に火を入れた3日間ほどは、興奮して寝付かれないとのことでした。
陶芸館のなかには、作品がゆったりとした雰囲気で、展示されていました。ほとんどが、釉薬を使わない焼締めの陶器で、計算されない窯変の妙が、なんともいえず魅力的です。青木さんに了解をとり、いくつかの気に入りの作品を写真に撮りました。
焼締窯変花瓶。低いテーブルに品よく置かれています。
焼締窯変面取り大壺。2番目もよし。
焼締窯変花入れ。高さ15㎝程度の小さな作品ですが、浮き出た赤茶色がなんとも美しい。
焼締窯変面取り壺。高さ30㎝以上ある大きな作品です。どっしりとしていて重厚、見ていて気持ちが落ち着きます。
右側に紫陽花釉壺があります。数少ない釉薬を使ったものです。
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