憲法記念日
先週の日曜日(5月3日)、高崎の群馬音楽センターで開かれた「第25回憲法記念日集会」に参加しました。メインの記念講演の始る前に、1947年5月3日の日本国憲法施行の日に発表されたという「憲法音頭」が、歌われ紹介されました。作詞サトウハチロウ、作曲中山晋平。その2番の歌詞は、次の通りです。
古いすげ笠 チョンホイナ
さらりとすてて
平和日本 花の笠
とんできた うぐいすひばり
鳴けば希望の 虹が出る ソレ
うれしいじゃないか ないか
この「憲法音頭」から、新しい憲法への希望と喜びを読み取ることは容易ですが、「古いすげ笠」をさらりと捨ててしまった日本国民の軽さに、その後の日本国憲法の苦難の歴史を予感させます。
この集会のメインは例年、護憲の立場から幅広く活動をしている人による講演会です。一昨年は、司法試験塾である伊藤塾塾長で弁護士の伊藤真さんの講演でした。伊藤さんは、日本国憲法で最も大切な原則は、「すべて国民は個人として尊重される」(第13条)ことだと話され、これが基本的人権や平和的生存権につながっていくと指摘されました。昨年は、ジャーナリストの斎藤貴男さんが、『改憲の動きと格差社会』と題して話され、今日の格差社会は、政府・財界の方針に基づき意図的に作られてきたことを、大変わかりやすく解明されました。
今年の講師は、朝日新聞記者の伊藤千尋さん。主催者紹介には、「世界65カ国を現地取材し、そこに生きる人々が憲法を活かして平和や権利を守る姿を目の当たりにする。その体験をふまえ、憲法を活かす=「活憲」を熱く呼びかける」とありました。講演の内容はまさに、伊藤さんの世界各地での憲法体験と活憲のすすめでした。もっとも強く印象を受けた話題をひとつ、書きとめておきます。
講演冒頭に紹介されたカナリア諸島の「9条の碑」の話です。
カナリア諸島は、アフリカ沖にあるスペイン領の島です。そこに、日本国憲法9条を書いた碑があるというのです。伊藤記者は、白いタイルに青い文字で憲法9条の条文がスペイン語で焼き付けてあるのを、現地で目にしました。1996年にできたそうです。9条の碑建設の経緯は、次のようです。
道路建設のときスペースができたので、市長は、ここを平和を考える広場にしょう、と考えました。さらに市長は、平和なら「ヒロシマ・ナガサキ広場」がいいと発想しました。そして、ヒロシマ、ナガサキを象徴するものとして、「日本国憲法第9条」が選ばれました。島にある日本総領事館も、9条のスペイン語訳を手伝い、市議会では満場一致で決まりました。
9条の碑ができあがり、島に住む市民が集まって除幕式をやりました。そして、ベートーベンの第9「歓喜の歌」をみんなで合唱したそうです。
嘘のような本当の話です。おとぎ話を聞いているような錯覚すら覚えます。「カナリア諸島 9条の碑」をグーグルで検索すると、700件もヒットしました。すでに日本でも、有名な話のようです。訪問者も結構いるようです。
世界が、9条を見ているのです。このことはまさに、日本社会に住む、日本国憲法を持つ人間の、はかり知れないほど大きな誇りです。
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