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2009年8月19日 (水)

金大中さんの死を悼む

Photo  韓国の元大統領、金大中さんが亡くなられました。金大中さんは、韓国の民主化と南北朝鮮の和解と統一に、その生涯を捧げられました。また、われわれ日本人に対してはたえず、和解の手を差しのべ、両国民の交流を促しました。金大中さんについては、日韓両国はもとよりアジアと世界の多くの人びとが、尊敬と親愛の感情を持ちつづけました。このことは、現代の政治家のなかでは、きわめて稀なことです。金大中さんのご逝去を、心からお悔やみ申し上げます。

 手元に、金大中著『獄中書簡』(岩波書店1983刊)があります。朴正煕大統領暗殺事件後、クーデターにて実権を掌握した全斗煥は、全国に戒厳令を敷くとともに、民主化を求める野党政治家を逮捕しました。これに反発した光州市民の民主化要求デモは、特殊部隊によって鎮圧され、市民多数が虐殺されました。そして獄中の金大中さんは、この光州事件を扇動したとして、死刑判決をうけました。この本は、このときに獄中から家族宛に書かれた29通の手紙からできています。
 手紙には金大中さんの、敬虔なカトリック信者としての神への信頼と忠誠、家族への深い愛情が、あふれていました。また、洋の東西の思想や哲学が幅広く言及され、知的好奇心の旺盛さとその水準の高さに、憧れと尊敬の気持ちを強く持ちました。
 私は当時、月刊誌「世界」に連載されていた『韓国からの通信』によって、隣国の民主化運動についてある程度の知識を持っていたのですが、金大中さんはじめ民主化を求めて戦う人びとの消息に、一喜一憂した記憶があります。そして、軍法会議にて死刑判決がでた時には、職場の友人たちとともに、大阪御堂筋で行われた抗議デモに出かけました。このときのことを、金大中さんは『獄中書簡』の冒頭に、「日本で、私のために数百万の署名が集められ、各地でデモンストレーションが起こっているということを知ったとき、私がどんなに強く励まされ、感謝したことか!」と日本の読者に書き送っています。この本を手にしたとき、これは私へのメッセージだと、素直な気持ちで感じたものです。
  

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