お茶の力、カテキンの威力
昨日の朝日新聞ネット版に、「インフル薬にお茶の力 カテキン加工、タミフルより効果」という記事が掲載されています。緑茶に多く含まれているカテキンの一種のEGCG(エピガロカテキンガレート)を加工し、季節性インフルエンザや鳥インフルエンザのウイルスに混ぜ合わせて感染力を調べた結果、「治療薬タミフルよりも約100倍、感染を抑える効果があった」というもの。さらに同記事では、「新型インフルエンザにも効果が期待でき、茶葉から大量に抽出でき、安価で副作用の心配も少ない」と研究者の話を紹介しています。
来週末、大学時代の友人4人が蓼科高原に集まり、40数年ぶりに勉強会をすることになりました。その昔京都大原で、パスカル『パンセ』の読書会をしたメンバーです。幹事からの指示は、何でもいいから90分間、好きな話題を提供せよ、とのこと。そこで私は、この10年間関わった茶の話題を提供することにし、カテキンを主人公に報告を組み立てていたところ、冒頭のネット記事に出会ったのです。恐るべしカテキン!と再認識しながら、報告の最後のまとめをしているところです。以下報告要旨。
「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり」と栄西は、その著『喫茶養生記』(全訳注 古田紹欽、講談社学術文庫 05刊)冒頭に書き記しています。この書に栄西は、こんなことも書いています。「諸薬各一病を治す。唯茶のみ能く万病を治すのみ」。つまり、茶は万病に効く、という訳です。栄西の茶の知識は、中国で得た情報から出来上がっています。従って、「茶が万病に効く」ということは、当時の中国の知識ということになります。私の報告は、この『喫茶養生記』に書かれた茶の効能効果を、現代科学で読み解くというものです。
さて、茶は万病に効くのか否か。
ネットで「万病の元」を検索してみると、「風邪」「冷え」「便秘」「肥満」等にならんで「活性酸素」があげられています。健康をテーマにしたテレビ番組や新聞記事で最近、「身体のサビ」について取り上げていることがよくありますが、これが活性酸素です。結論を先にいいます。
活性酸素は万病の元である。茶の活性酸素撃退能力は抜群である。故に、茶は万病に効く。
活性酸素は、呼吸によって身体に入った酸素の1%が活性化したもの。病原体退治やホルモン合成に役立つ反面、内外からの刺激(紫外線・環境汚染物質・細菌・喫煙・心的ストレス)によって、細胞破壊、酵素非活性化、遺伝子障害をひきおこします。また、蛋白質や脂質と結合して過酸化脂質(これが身体のサビ)ができ、ガン、遺伝病、動脈硬化、糖尿病、心臓疾患、老化を促進します。
一方活性酸素は、体内で不必要になると、もともと体内にある抗酸化酵素によって無毒化され、酸素と水に分解されます。しかし、加齢とともに抗酸化酵素は減少し、放っておくと活性酸素が暴走し、身体を破壊します。高齢社会ゆえに、「活性酸素は万病の元」なのです。そこで、加齢とともに減少した抗酸化酵素に代わり、抗酸化物質を補給する必要があります。
抗酸化物質は、カテキン、フラノボノイド、カロチノイド、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどで、野菜や果実に多く含まれています。タンパク質・糖質・脂質が3大栄養素、ビタミン・ミネラルを加えて5大栄養素、さらに食物繊維が加わり6大栄養素、そして抗酸化物質は、第7の栄養素と呼ばれています。
緑茶に含まれるカテキンEGCGの抗酸化力は、ビタミンEの4倍、ビタミンCの2倍と強力。しかも茶には、ビタミンEやビタミンCも豊富に含まれています。極大雑把にいって、緑茶の抗酸化力は、野菜や果実の約70倍あります。つまり緑茶には、他の何者にも負けない抜群の活性酸素撃退能力が、備わっているのです。まさに「唯茶のみ能く万病を治す」のです。800年前の栄西や彼に情報提供した中国の人々が、カテキンや活性酸素のことを知っていた訳がありませんが、長年にわたる喫茶の経験から、茶が万病に効くことを体得したのだと思います。
来週末は、こんなことを、古い友人たちに話すつもりです。最早初老期をこえた昔青年の友人たちも、健康話には耳を傾けてくれるだろうと、甘い期待をしています。勿論、眠気除けのために、美味しい煎茶と中国茶各種を、持参していくつもりです。
コメント