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2009年10月 6日 (火)

翔天空・尾瀬アヤメ平の秋 その二

Img_2106_1  2日目は、早朝5時に起床、朝食のあと6時30分に山小屋を出発しました。わずかながら雲が切れ、東の空に晴れ間が見え始めました。コースは、「見晴し-竜宮-土場-富士見田代-アヤメ平-中原山-横田代-鳩待峠」の標準時間で6時間、距離12㎞、標高差500m余の登山行です。  

Img_2114_1  メンバー8名は、リーダーが唯ひとり、百名山を9割方を登ったという経験者である以外は、恐らく、山登りは年1回といった人たちです。なかには、2年前に大病を患ったという人も含まれています。だから、リーダーが時間と空模様を見ながら、一行を慎重に牽引していきますが、最後尾の私は、写真撮りを口実に、登山速度を軽く緩めます。私の心臓にとっても、このゆっくり速度が適当です。Img_2138_1
  このコースの最大の難所(この隊にとっての)は、竜宮十字路から少し歩いた地点から土場までの.1㎞強の急な登り道です。元患者で、夜は誰よりも元気者のNさんと、ボツボツ登っていきました。いつも飄逸なHさんが、2人の無事を確かめ激励するために、前方から時々声を掛けてくれます。「平らな道だよ~!」。期待して登っていったら嘘でした。
Img_2151_1  標高が高くなるにつれて、木々の紅葉が深まり、赤と黄を基調とした多様な葉色に彩られます。ミズナラやブナの樹の間から下方を見遣ると、雲間からのぞいた太陽の光が、尾瀬ヶ原の湿原を照らし出し、草紅葉が落ち着いた美しさを見せていました。Img_2174_1
 急な山道を登り出して1時間10分、難所の終点土場に到着。リーダーの差し出す青い蜜柑を食べた後、今度はゆるい登りの木道を、アヤメ平を目指して再出発。木道の傍には、赤い実をつけたゴゼンタチバナ(御前橘)が、しばらくの間、目を楽しませてくれました。近くにあったアオキの実大の、赤い実をつけた山草。名前はわかりません。
Img_2182_1  9時35分、富士見田代に到着。突然、深い森のなかから、天空の湿原に押し出されました。池塘の向こうに白雲を被った燧ヶ岳が、デンと座していました。昨年ややバテ気味だったN君は今年は絶好調で、来年は是非燧ヶ岳に登りたい、と提案しました。天気は、曇天から薄曇に変り、風が強くなり始めました。
Img_2208_1  アヤメ平に向かう尾根筋からは、オオクマザサの草原とブナ林を眼下に見下ろし、尾瀬ヶ原では味わえない登山気分を満喫しました。フラット好きのグループですが、時には「登山」もいいなと思いました。Img_2242_1
 10時06分、アヤメ平(1979m)に到着。コメツガやオオシラビソの針葉樹に囲まれた湿原には、草紅葉のなかに池塘が点在しています。針葉樹林の向こうは、まさに、天空です。風が強く、すこし寒くなり始めたので、セーターと薄手のジャンパーを着込みました。 
Img_2212_1 荒廃した湿原の植生復元作業が行われていました。ヌマガヤやミタケスゲの移植や播種作業をしていると、看板に記されています。1960年代前半までは、富士見峠が尾瀬入山の主要な入山口にあたり、木道もなかったため湿原は荒れ果てました。そこで、66年から湿原の植生復元作業が開始され、現在に到っているとのことです(先述『尾瀬自然観察手帳』による)。既に40年以上経過していますが、未だ湿原荒廃の傷口があちこちに残り、自然の回復の困難さを強く感じました。Img_2237_1
 アヤメ平-中原山(1969m)から鳩待峠の少し前までは、ほとんどがゆるい下り坂となります。森林植生は、針葉樹林帯から落葉広葉樹林帯に徐々に変っていきます。カメラの逆光によって浮き出た針葉樹のシルエットは、コメツガでしょうか。何らかの原因で芯が折れた後、側芽が伸びて2本立てになったものです。Img_2298_1
 同じように、ダメージを受けた広葉樹が、回復に努めた結果、こんな具合にグルリンと枝を回しました。こちらはブナでしょうか。森のなかの樹木たちは、厳しい自然のなかで、必死の生き残りを図っています。Img_2279_1
 針葉樹が消え広葉樹だけとなってきた頃から、鳩待峠まで2㎞、1㎞、500mとカウント・ダウンがはじまりました。カエデの紅葉が、私たちを出迎えてくれます。薄曇の空には、青空が広がってきました。至仏山が姿を見せ始めました。
 そして正午丁度に、全員揃って、鳩待峠に到着。早朝6時30分に見晴十字路の山小屋を出発してから5時間半。予定よりも、少し早めの下山でした。

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