悲しい出来事
この日曜日に、甥が亡くなりました。2年前に肺がんを患っていることが判り、その後、長い闘病生活を続けていたのですが、ついに、帰らぬ人となってしまいました。40歳の若さで、あとに妻子4人を残しての逝去でした。
彼らしいお別れの会にしょうと、家族と親戚、友人が相談し、さほど広くない葬祭ホールを会場に、無宗教での告別式をとり行いました。ご遺体を置いた祭壇中央に遺影写真が掲げられ、左側には家族5人の旅先でのスナップ写真、そして右側に、テニスを愛した故人のラケットとウェアー、シューズが、飾られました。その周りは、白色を基調にした季節の花で埋めつくされ、ホール正面は、静かな花園となりました。
司会者による開式の挨拶のあと、参列者全員で黙祷を捧げました。前日の通夜の三分の一ほどの参列者でしたが、ほぼホールを埋め尽くした人びとは、ともに悲しみをわかち合いました。3人の方から、弔辞をいただきました。故人の勤務先の社長と高校以来の友人、そして従兄弟のひとり。この社長は、転職後数ヶ月で病魔に冒された甥を、最後まで、会社に留め、彼のプライドと生甲斐を保持し、経済的なサポートをしていただいた、恩人です。背景には、故人の主治医からの会社への懇願があったと、後で聞きました。友人は、甥の死を、病魔の苦痛からの解放と理解していると、言葉をかけました。この言葉を聴き、私も同様に、甥は「無苦」になったと思いました。
遺族と参列者による献花のあと、甥の生前の姿を撮った写真のスライドを、上映しました。前日夜遅くまで、息子と2人で制作したものです。BGMには、バッハのギター曲をいれ、最後に、故人のお気に入りだったというアンジェラ・アキさんの『手紙-拝啓十五の君へ』を挿入しました。
いつの時代も 悲しみを避けては 通れないけれど
笑顔を見せて 今を生きていこう
拝啓 この手紙読んでいるあなたが 幸せな事を 願います
甥が思春期に差しかかった、2人の娘と1人の息子に贈った、最後のメッセージだったのだと、この歌を聴きながら、思いました。3人の子供たちも、終始、泣き崩れることなく、けな気にも涙をこらえて、この歌を聴き入っていました。
告別式から帰宅し、ひとり般若心経を、ゆっくりと一文字づつ、読みそして唱えました。今年、三度目の読経です。息子の二十周忌と母の告別と甥の今回です。こうして、私の2009年が、暮れていきます。
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