普天間基地移設計画についての声明
『世界』3月号で、先月18日、学者・知識人による「普天間基地移設計画についての日米両政府、及び日本国民に向けた声明」の記者会見発表があったことを、知りました。マスメディアは、沖縄2紙と時事通信以外は、この記者会見を無視しました。私自身、ネットでニュースを丹念にフォローせず、新聞、TVに依存していたため、このことを『世界』を読むまで知りませんでした。
宇沢弘文さんの「国民的運動を」との呼びかけにこたえ、ひとりでも多くの方に、この「声明」を読んでいただくために、ここに取り上げます。是非、「声明」を読んでいただきたい。
参院議員会館で行われた記者会見では、『世界』編集長の岡本厚さんの司会のもと、はじめに、宮本憲一さんが「声明」発表の趣旨説明され、その後、11人の呼びかけ人が、それぞれ発言されました。主な発言内容を、YouTubeから紹介します。
宮本憲一(大阪市大・滋賀大名誉教授):沖縄の米軍基地は、占領下銃剣のもとで、米軍によって取り上げられ建設されたものだ。しかし、計画されている辺野古基地は、日本人がはじめて自分たちの手で、沖縄に新基地をつくる、ということだ。今後の日米関係を決定的にする重要な問題だ。
宇沢弘文(東大名誉教授):CIAの全面的支援で総理大臣になった岸信介が締結した安保条約のもと、戦後65年間も米国の植民地と化している日本を、今後どうするのか。
遠藤誠治(成蹊大学教授):安定した日米関係とは、従属した関係ではない。意見の多様さ、相異があっても重要なところで協力し合う関係だ。メディアが、普天間基地の移転について、日米間で意見と利害の違いがあるからといって、安定が損なわれるというのは、おかしい。
寺西俊一(一橋大学教授):辺野古沿岸は、ジュゴンの生育地。普天間の人権侵害を解決するために、環境を破壊するというのか。
小森陽一(東京大学教授):米政府の内政干渉的な脅し、恫喝に対して批判しないマスメディアは、どこの国のメディアなのか。主権国家ではなく隷属状態にあった国のメディアが、問題の所在を問いかけることすらしなくなっている。
加茂利男(立命館大学教授):基地のもって行く場所がない、というクールなリアリズムに陥っている。こうして、太平洋の両岸で生まれた新政権が、チェンジという志を沈静化しつつある。が、これまでのシステムをどう転換していくか、国民と政府の両レベルで意見交換し、解決策を見出していくべきだ。
前田哲男(評論家):60年安保のときのメディアは、近代メディア史上例のないほどの、大きく報道に活躍したのに比べ、現在の日米安保と沖縄問題に対するマス・メディアの現状は、隔世の感がある。メディアは何をしているのだ、といいたい。
和田春樹(東京大学名誉教授):安保体制は、沖縄の犠牲の上に成立している。しかし、これ以上、沖縄を犠牲にできない。嘉手納基地への統合を検討するというのなら、4000m滑走路をもつ横田基地への統合、本土米軍基地への統合を、全面的に検討すべきだ。そして、それができないなら、国外へ移転させるべきだ。
この知識人・学者による『声明』が、今後、日米両国の市民と政府関係者に、より広く読まれていくことを、こころから期待します。
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