カタクリの花
毎年この時期になると、高崎市吉井町小串では、カタクリの花が咲きます。北斜面にあるクヌギとヤブツバキの混交林の林床に、見事に群生しています。いちじは心ない山野草マニアによって盗掘され、絶滅の危機にあったのですが、地元の小学生をはじめとしたボランティアの努力の結果、カタクリ群生地としてよみがえりました。
ここ小串では、国道近くにある50メートルほどの木道沿いに、カタクリの群生をみることができます。多くが薄紫の花色ですが、なかにはピンクの株もまじっています。朝、下方に閉じていた花は、日が昇るにつれて、大きく開きました。 ウィキペディアのカタクリの項を読んで、スプリング・エフェメラル
(Spring ephemeral)という言葉をはじめて知りました。カタクリのように、「春先に花を咲かせ、夏までの間に光合成を行って地下の栄養貯蔵器官や種子に栄養素を蓄え、その後は春まで地中の地下茎や球根の姿で過ごす」という生活史を持つ植物で、落葉樹の林床に多くみられるものをさします(ウィキペディアより)。 6,7月の尾瀬ヶ原でみることのできる山野草のほとんどが、このスプリング・エフェメラルということになります。
ephemeralは、英和辞典によれば、「一日限りの、短命な、つかの間の、はかない」などの意味があります。直訳だと「春、つかの間の花」といったところ。なかには、「春の妖精」と訳している人もいます。これはなかな かいい。ウィキペディアのスプリング・エフェメラルの項に、このカテゴリーの植物が、本来北方の植物であるにかかわらず、照葉樹林帯の里山にも多くみられるのは、縄文人による生態系操作による、との仮説を紹介していて、大変興味深い。北関東のこのあたりは多分、落葉広葉樹林帯と照葉樹林帯の境界域にあたります。ならば、スプリング・エフェメラル=春の妖精たちにとっては、住み心地はいいはず。
庭やまわりの里山が、春の妖精たちでにぎわうようになれば、こんな幸福なことはないだろうなあ、とカタクリの花を愛でながら、しみじみと思いました。
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