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山中信介の住む根津界隈は、大空襲で被害にあわなかった、東京では数少ない地域でした。戦災で生き残った縁者が、信介を頼ってやってきました。亡くなった長女の嫁ぎ先の祖父母と義理の妹、亡兄の妾と信介が密かに思いを寄せる未亡人、知人の娘さんが二人。信介の家族5人を含め総勢12人が、敗戦直後の混乱期を、ひとつ家族のように肩を寄せ合って、なんとか働き、暮らしていきます。
続きを読む "井上ひさしさんの追悼読書 下" »
井上ひさしさんが亡くなり、半月たちました。好きな作家の一人でした。小説 『吉里吉里人』に抱腹絶倒し、宮沢りえ主演の『父と暮せば』に嗚咽を漏らしたことを、思い出します。また、小田実さんや加藤周一さんとともに「9条の会」の呼びかけ人のひとりとなり、平和憲法を護ることを訴えつづけた姿に、つよく共感しつづけました。井上さんへの哀悼の気持ちを込めて、未読であった代表作のひとつ『東京セブンローズ』(文春文庫2002年刊、単行本は1999年刊)を読みました。
続きを読む "井上ひさしさんの追悼読書 上" »
母の一周忌にあたり週末、京都へ墓参りに行きました。身内だけの小人数で、左大文字山麓にあるカトリック墓地に両親の墓にお参りしたあと、姉夫婦の住む宇治へいきました。年明け「源氏物語」を読んだところなので、この機会に「宇治十帖」の舞台を訪ねることにしました。写真は、あさぎり橋のたもとにあった「宇治十帖モニュメント」。
続きを読む "宇治十帖の地を訪ねる" »
群馬県立近代美術館の一角にある「森のレストランころむす」において、『食からはじまる地域づくり』と題した講演会がありました。近所の専業農家で、14ヘクタールの稲作経営をしているYさんから誘われ、家内とともに参加しました。彼は、このレストランに古代米を納品しているとのこと。(写真の美術館一階にレストランがあります)
続きを読む "シェフから「地域づくり」の話を聞く" »
加藤周一は『日本文学史序説』において、日本文学史の最初の転換期は、9世紀(平安初期)の、それまでに輸入された大陸文学が「日本化」された時期としました。この期には、空海と菅原道真があり、在原業平と紀貫之があり、そして『竹取物語』が書かれました。そして、つづく「源氏物語」と「今昔物語」の時代を経て、第二の転換期へと展開します。13世紀、鎌倉時代。貴族支配体制が崩壊し、武士階級が新たに、権力を掌握します。しかし、文学・芸術の創作を支えたのは、依然として、貴族と僧侶でした。
続きを読む "加藤周一と道元『正法眼蔵・現成公案』を読む" »
朝夕は花冷えがするものの、さすがに春の日差しは暖かく、日中は思わず眠気をもよおします。西上州の地は、どこへいっても、桜が満開です。彼岸前に、高崎市吉井町小串に、カタクリを見に行ったことは既に報告しましたが、そのすぐ近くの農家の裏庭に、りっぱな枝垂れ桜が咲いていました。農家の敷地を被いつくすほどの大木です。
続きを読む "お花見" »
老いた牡牛が、大きな口をあけて自慢の臼歯を、獣医にのぞかせています。その動作は、いかにもゆっくりとして、まのびするばかりに平穏です。そして獣医が、寿命の長くないことを告げます。それでも老牛は、健気にも働きつづけます。この40歳にもなる老いぼれ牛が、このドキュメンタリー映画の大切な主人公のひとり(一頭)です。
続きを読む "ドキュメンタリー映画『牛の鈴音』" »
今年2010年は、韓国を併合して100年になるとともに、日本の近・現代史最大の思想弾圧事件である大逆事件から100年になります。雑誌『世界』に、昨年1月号から毎月連載されていた田中伸尚稿『大逆事件 100年の道ゆき』が、今年の3月号で完結しました。これを機に、全編を読みなおしました。(写真は、幸徳秋水と管野スカ゛)
続きを読む "田中伸尚稿『大逆事件 100年の道ゆき』完結" »