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2010年7月19日 (月)

講座『里山の危機-竹林が森を食い尽くす』

 高崎市の南西にある小高い丘陵地帯を観音山丘陵といいます。ここには、高崎観音や少林山達磨寺などの寺院、森林公園・自然遊園地・染料植物園・キャンプ場などの野外施設、そして障害者の暮らす国立コロニー等々が、あります。また、高崎市側の東北山麓には、高崎市民の住む住宅地がひろがり、逆の南西山麓には、棚田や畑とそれを耕す農家集落があります。これらの田畑や住宅・施設を大きく取り囲んでいるのが、主にコナラやクヌギからなる里山です。

 一昨日の土曜日、観音山丘陵ネット会議と高崎商科大学国際・地域交流センター共催による「里山の仲間たち-人と生き物-観音山丘陵で森作りをする仲間たちと生物多様性保全の道筋を考える」と題した連続講座がはじまり、参加しました。観音山丘陵の自然保護運動を担ってきた人たちによる講座です。今年2月、私たちの仲間で開催した『竹林整備講習会』に参加されたTさんからの誘いでした。第1回講座では、そのTさんが話題提供されました。以下、Tさんの話とレジュメから、報告します。
 Tさんたちは3年前から、この丘陵にある竹林を整備しつづけています。彼女たちがこの活動をした背景には、観音山丘陵の自然がかかえる問題として、ゴミの不法投棄・廃棄物処理場建設・住宅や墓地建設そして竹林拡大などがありました。特に竹林が森を食い尽くす勢いで拡大することに対して、「里山再生に求められている生物多様性が損なわれる」という危機感をもち、イノシシ被害や道路障害も重なって「なんとかしたい!」ということで、はじまりました。
 放置された竹林を借り受け、竹林をA・B・Cの3地区に区分し、地区ごとに整備目標を立てました。A・B地区は、竹を皆伐して広葉樹を育てることにし、C地区は、広葉樹育成地区と竹林育成地区の両方を目指しました。毎月第1土曜日の午前を定例日とし、3年間の延参加者450名で整備しつづけてきました。その結果、A・B地区の竹はほぼ、皆伐できたということです。ユンボや竹粉砕機を活用したことが、作業効率を高めました。
 3年目の今年からは、竹炭づくりに挑戦しました。深さ15㎝ほどの穴を長方形状に掘り、そこに丸太を組み竹をのせて点火。竹が燃焼する途中でトタン板で覆って、蒸焼きにします。トタンで覆った穴の先端に、煙突を立てます。そして、トタンの上から土を被せて完了。翌日、土を除けトタンを取れば、竹炭のできあがり。今春は150㎏の竹炭を作りました。
 竹を皆伐してできた土地には、粉砕した竹からつくった堆肥を撒き、菜種を作ってこの6月収穫しました。Tさんは、会場に小型搾油器を持ち込んで、菜種搾油の実演をしました。大学の小さな教室は、菜種油の芳ばしい香で一杯になりました。
 Tさんたちの活動をみて、周辺の竹林所有者が徐々に、竹林を整備しはじめた、という報告もありました。
 このようなTさんの話の後、初回でもあったので、25人前後の参加者全員が、自己紹介をしあいました。Tさんといっしょに活動している人たちを中心に、県内各地で竹林整備や自然保護運動をしている人たちでした。日本熊森協会の人は、酸性雨によって日本の松やナラの森が衰退してきており、酸性化した土壌を活性化するために、Tさんたちから提供された竹炭を、観音山丘陵の松林に散布していることを報告されました。竹炭は表面積が木炭よりも大きく、土壌活性化作用に大変有効だとのことでした。小学校の先生は、竹は日本文化の大切な素材だと思うが、現実は邪険に扱われている。竹林整備の活動を通して、竹について考えてみたい、と感想を述べました。ある参加者は、結局竹をどのように使うかが問題だ、としたうえで、100円ショップやホームセンターなどで、廉価な化学製品を安易に買って生活していることを見直すべきだ、との意見発表もありました。
 このようにして2時間の講座は終りました。

 いろんなことを学びました。
 私の住む観音山丘陵の自然について、こんなに真剣にかつ真面目に、しかも結構楽しんで保護活動をしている人たちがいることに、心強く思いました。日本熊森協会については、初めて知りました。講座のなかで話題になった剣崎浄水場の緩速ろ過方式についても初知見。近代水道百選にも選ばれた、自然に依拠した優れたろ過方式ということです。富岡製糸場で使用された亜炭は、観音山丘陵の鉱山で掘られていたそうです。これも初知見。たまには、こうした講座に出掛けていくのもいいものだと思いました。なによりも、私たちの竹林整備の活動を見直すいい切っ掛けにもなります。Tさんたちの手作りの竹炭平窯のアイデアは、素晴らしい。竹林所有者を含む地元住民主体で活動している私たちのグループの優位性は、Tさんたちの土地所有者や地元民への気配りや地元情報の少なさから来るご苦労を考えると、大切にしなければならないと再認識しました。

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