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2010年7月10日 (土)

『誕生!中国文明』展

Photo_3  昨日、上野の国立博物館にて、『誕生!中国文明』展を観ました。中国河南省出土の、夏から北宋までの3000年間の、青銅器や陶磁器など150点の名品を集めたもの。昨年の中国旅行では、河南省を含めた各地の考古学博物館を訪れ、中国の悠遠なる歴史に圧倒されましたが、今回再び、中国文明あけぼのの頃の名品に出会い、味わいを一層深めました。(『神獣』春秋/前6~前5C/高48㎝)

 金曜日の午後4時、さほど多くない観客が、館内をゆったり巡っていました。男性の中・高年齢者が多く、古代の中国人の作品を一点一点を、丁寧に観ています。中国の博物館では多くの場合、フラッシュなしの写真撮影は許可されており、しかも観客数も多かったため、館内はなんとなく気忙しい雰囲気でしたが、昨日の上野の博物館では、落ち着いた環境のなかで静かに、悠久の中国文明を楽しむことができました。
Photo_4  今回の展覧会の呼び物のひとつ、『動物紋飾板』(夏/前17~前16C/長辺16.5㎝)について、書き留めておきます。
盾形をした青銅板に青いトルコ石を象嵌(嵌め込み)したもの。説明書きには、下部は狐のような動物の頭と前脚があり、中央の頭上には幅広の尾、そして上部で後脚が向き合っている。中国王朝誕生のころ、身分の高い人が身につけた、権威を象徴する装身具だ、と記しています。1984年、洛陽の偃師市二里頭(エンシシ・ニリトウ)遺跡で発掘されました。この二里頭遺跡が、中国最古の王朝といわれている夏の遺跡だと推定されています。夏は、前2070頃~前1600年頃。
Photo_7 ネットで検索したところ、「盾形銅牌飾の研究」という興味深いサイトがあり、その論文のなかで、同類の遺物が、わずかながら実在することを知りました。このなかには、夏出土の国宝級の出土品もはいっています(2図とも々論文からのコピー)。
2  右の図の左側が、今回展示されているそのものです。中国人学者の論文からの引用されています。3000年以上昔の装身具が、象嵌されたトルコ石の一片すら欠けることなく、完璧な姿でここにあることが、不思議に思います。みればみるほど「狐のよう動物」は、やはり狐そのものにみえてきます。

 昨年中国へ行く前に読んだ、陳舜臣著『中国の歴史一』の「三皇五帝」の一部を読み直しました。中国史のうち、神話と歴史の境界域にある時代を取り扱った、本書の冒頭章です。このなかに狐の話が出てきます。『史記』列伝の冒頭「伯夷・叔斉」伝に関わる話題。周の武王が、武力によって殷を討とうとしたのを、伯夷と叔斉が諌めるが、ききいれません。二人は、周の天下になっても周に仕えるのを潔しとしないで、首陽山にかくれ、ワラビを摘んで食べますが、ついに餓死してしまいます。その死に臨んで二人がうたった歌。
  
  彼の西山に登り、その薇ワラビを采る
  暴を以て暴に易え、その非を知らず
  神農、虞、夏、忽焉コツエンとして没す
  我、安ずくにか適き帰らん
  于嗟アア、かん 命の衰えたるかな 

  あの首陽山に登って、その薇を採って暮らしている
  暴力によって暴力にとってかわり、その間違っている事に気づきもしない。
  神農や舜帝、禹王が作った美しい世の中は、たちまちにして今はない。 
  私はどこに帰依すればよいのだろう。
  ああ、もうおしまいだ。 天命も衰えたものだ。(ウィキペディアの訳)

 『史記』には、「伯夷・叔斉は孤竹君の二子なり」とありますが、陳舜臣さんは、「「孤」は「狐」と共音であり、「竹」は「属」と互通し、孤竹とは狐族にほかならないとする説もある」と指摘します。「狐をトーテムにした部族」ともいってます。伯夷・叔斉は殷代末期(前1000年頃)の孤竹国(河北省唐山市説)の王子。狐を描いた『動物紋飾板』は、前1650年頃の洛陽市周辺のもの。この年数と距離の間は、近いのか遠いのか。そして、はたして関係がありやなしや。こんなことを考えながら、あらためて、トルコ石に輝く『動物紋飾板』を見つめています。

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コメント

高校三年です。記事を読み、『誕生!中国文明』のことを知り、ぜひ行ってみたいと感じました。ありがとうございます。
僕は中国ファンです。『三国志』『水滸伝』『楊家将』などは片端から読みました。それから、太刀掛呂山氏が記した『詩語完備 だれにもできる漢詩の作り方』を買い、拙い漢詩を自作したりしました。陳舜臣さんの著書も随分と読みました。そのたびに中国のみならず、インドやイスラーム文化に対する理解も深い陳舜臣さんの幅広い知識に感動していました。見習いたいと思いますがなかなかに難しい・・・


今回は、里山のフクロウさまが「普天間基地移設計画についての声明」のことにふれていることを知り、お願いがあり、コメントします。記事内容と関係なくて、不愉快に感じられたら、申し訳ないです。(コメントを削除してください。)

一ヶ月ほど前、高校生が集まり、「普天間基地撤去を求める高校生の会」を立ち上げました。「1 普天間基地の閉鎖・撤去」「2 沖縄県内への移設の反対」などが目的です。具体的には署名を集めています。

下記のウェブサイトに詳しいことを書いています。
http://jimorikouken.web.fc2.com/

突然で申し訳ないのですが、できたら、協力していただけませんでしょうか?

早速のコメント、ありがとうございます。
この記事が、上野の博物館に足を運ばれる切っ掛けになったとすれば、幸いです。紹介した遺物以外にも、青銅器や陶器など、すばらしいものが、やってきています。古代中国を堪能して下さい。
普天間基地撤去の署名活動に賛同し、高校生の皆さんの真摯な行動に、感動しました。早速、署名させていただきます。(里山のフクロウ)

もうすぐ夏休みなので、そうしたら、『誕生!中国文明』に行きたいと思っています。いろんなことができる夏休みが待ち遠しい・・・
署名していただき、ありがとうございます。本当に嬉しいです。

 神獣 この程15キロほどの 虎に龍の青銅の神獣1対の作品並びに方カ。母カ。バンチ紋方鑑。カナエ。銅鼓を入手致しました、但し銅鼓以外は 複製品ですが。このHPの神獣が非常に参考になりました。本来の中国青銅器は 素人の所持は叶えられるものではなく、ただ東博 東洋館にて拝見するのみの作品群です。2014.8に町のフェステバルにて7点展示しますが、間違って本物の銅鼓が購入出来ました。横にして叩くと良い音が響きます。Thailand にて購入したとのこと お陰ですべて レプリカでなくて 満足です 参考になり感謝致します 

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