尾瀬は晩秋から初冬へ-上-
一昨日(10/26)昨日(10/27)の2日間、友人3人とともに、尾瀬を散策してきました。コースは、鳩待峠-アヤメ平-竜宮-見晴-沼尻-尾瀬沼ビジターセンター-三平峠-大清水の間で、全長27.2㎞にわたるやや長丁場の山歩きでした。散策路での樹々の紅葉は、三平峠から大清水への下山途中を除くとほぼ終わり、季節は晩秋から初冬へと移りゆきつつありました。
26日10時45分、鳩待峠を出発。天気は曇り、気温12℃、濃霧や強風はない。2日前のヤフー天気予報の「晴れ/曇り」の半分だけがあたりました。ゆっくりした上りの樹林帯を1時間ほど歩き、12時に横田代につき食事。気温は6℃まで下がり、じっとしているとさすがに寒い。木道の下には、ゴゼンタチバナ(御前橘)の赤い実が生っていました。
今回のコースで最も高い位置にあるアヤメ平(1969m)の池塘。その向こうは、霧に包まれた灰白色の世界です。この夏、家内や娘と此処へ来た時は、真っ青の空を気持ちよく仰いだのですが、今回は茫漠とした宙空を、初老の男4人がぼうっと、眺めるばかりでした。しかし、スゲ(菅)やカヤ(萱)からなる草紅葉が、灰白色の世界に、茶褐色の渋いいろどりを添えていました。
出発してから2時間35分、ほぼ予定通りに、天空の小さな湖、富士見田代につきました。燧ケ岳の山容を眺めることはできませんでしたが、この小さな湖はいつみても美しい。ここから竜宮十字路までの4.2㎞は、標高差500mほどを一気に下ります。だから、植生の垂直分布、オオシラビソ(大白檜曽)やコメツガ(米栂)などからなる針葉樹林帯からブナ(橅)やミズナラ(水楢)からなる落葉広葉樹林への変化を見ることができます。
樹林帯に入って間もなくして、足もとの赤色の実に気がつきました。ツルリンドウ(蔓竜胆)の実です。昨年の秋、このコースの逆を歩いたときにも丁度、この付近でみました。尾瀬の他所では、ほとんど見かけることがありません。湿地や樹林に咲く山野草は、それぞれ自分たちの場所を、決めているようです。
今回の尾瀬散策では、大きな樹木が立ち枯れているのを、あちこちで見かけました。何度も来ている所なので、必ずしも新しい発見ではないのですが、数日前の朝日新聞で「谷川岳でナラ枯れ 県内で初確認」という記事を読んでいたので、樹木の枯死が気になっていたのです。記事では、「ナラ枯れ」は東北から九州まで広範囲に広がっており、群馬では今回はじめて発見されたということです。 針葉樹の立ち枯れも見かけましたが、とりわけブナ、ミズナラ、ダケカンバ(岳樺)などの落葉広葉樹の枯死が、目立ちました。新聞記事の「ナラ枯れ」現象と関連しているのか否かは、わかりません。立ち枯れした広葉樹には、キノコが生え、苔が生(む)していました。
富士見田代と竜宮十字路の中間点の長沢の頭からは、勾配の強い下り坂となり、それまでは心臓の負担の少ない降りのほうがよほど楽でいいといっていたのを、撤回したい気分となりました。疲れで脚はがくがくし始め、時々よろめいて危険この上ない。すると眼下に、尾瀬ヶ原が見え始めました。しかも、太陽の日差しを受けて、草紅葉が明るく輝いていました。これから先は、下り坂に気をつけつつ、尾瀬ヶ原の遠景を楽しみながらの下山となりました。
15時30分、竜宮十字路へ到着。鳩待峠-竜宮十字路間10.5㎞を、4時間45分かけて歩いたことになります。昼食と30分ごとの休憩時間を入れると、ほぼ標準時間(昭文社『山と高原地図』)なみの速さです。平均64歳の男たちとしては、上出来だと、自己満足。この日出会った登山客は、二人だけ。そのうちの一人が、中田代の方角から竜宮小屋へ向かって歩いてきました。尾瀬ヶ原と尾瀬沼の山小屋は、ほとんどが10月16日に閉鎖となり、竜宮小屋(11月1日泊まで)と長蔵小屋(11月2日泊まで)の2ヶ所のみの営業となっていました。
私たちの泊まった竜宮小屋の泊り客は、登山客6名、木道工事労働者5,6名ほど、シカ食害調査員1名の10数名だけでした。部屋は、窓外から晩秋の湿原を見下ろすことができました。昨年、この山小屋は改築され、風呂やトイレは清潔そのもの。布団や毛布も手入れよく、気持ちがいい。早い夕食をとった後は、友人たちと美味な酒を酌み交わし、他愛のない話に興じながら、ひとりが寝、二人目も寝て、そして全員が寝入りました。(この記事、続く)
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