« 尾瀬は晩秋から初冬へ-下- | トップページ | 古代の上野國 »

2010年11月 5日 (金)

てんさい糖が店舗から無くなった

E089020h てんさい糖が、近所のスーパー店頭から、姿を消しました。ネット通販でも探しましたが、こちらも皆「在庫なし」。スーパーの棚には、「生育不良によりメーカー在庫欠品」の表示がありました。刺激のない温和な甘さにひかれて、随分前から愛用してきた砂糖ですが、こんなことは初めて。食材や調味料にこだわる家内は、市内各所のスーパーを探しまわり、やっと6店舗目で、残っていた1袋を見つけました。

 スーパーでは入荷見通しについて要領を得ないため、メーカーにネット経由で尋ねたところ直ぐに回答がありました。それによれば、昨(2009)年産の北海道産てんさいが生育不良によって減産となり供給量が減少した一方で、年々需要が増大し、端境期になって在庫欠品となった、とのこと。10年産の出荷が始まる11月下旬から出回る、ということでした。ちなみに今(2010)年産の作柄についても、夏の猛暑の影響で不作となり、収量・ 糖度ともに落ち、減産必至の情勢です。すると来年の端境期もまた、在庫欠品の可能性があるということなのでしょうか。食品メーカーにとっては、「在庫欠品」は他のあらゆるクレームを越えた異常事態だと思いますが、メーカーからの回答には、そうした危機感が感じられません。
 ところで現在、砂糖の国際価格が、高騰しているようです。指標となるニューヨーク市場の現物価格は、09年1月(09/1と表示)の13.11セント/ポンドから10/1の28.94セントと2倍以上に急騰しましたが、主要生産国ブラジル、インドの生産回復情報をうけていったん、10/5に19.59セントと下落。ところが、インドは天候不順により2年連続の減産となった結果、輸出国から輸入国へと転換し、また、ブラジルも長雨により生産は伸び悩み、価格は再び上昇。8月25.09セント、9月31.19セント、10月も30セント以上の上昇基調が続いています((独)農畜産業振興機構10/10/15の記事から)。年平均価格が、07年11.6セント、08年13.84セントということですから、この1年の価格急騰ぶりがわかります。
 この価格急騰の背景には、主要生産国での天候不順による減産と同時に、途上国の人口増加と所得向上による砂糖需要の増加があります。特に、インドや中国など経済成長の著しい国々での大幅な消費増が、目立ちます。今後、インドの砂糖のように、途上国が経済成長とともに国内消費量を大幅に増化させ、その結果、輸出国から輸入国に転換するという事例が、他の農作物でも発生するものと予想されます。農畜産物の需要は堅調に増化する一方、生産=供給は、地球温暖化を基調とした天候異変により、たえず波乱含みで推移します。食糧の需給逼迫は、近未来に迫った危機のような予感がします。スーパーからてんさい糖が消えたことから、こんなことに思いが及びました。このことが杞憂であることを、願うばかりです。

« 尾瀬は晩秋から初冬へ-下- | トップページ | 古代の上野國 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: てんさい糖が店舗から無くなった:

« 尾瀬は晩秋から初冬へ-下- | トップページ | 古代の上野國 »