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2011年11月14日 (月)

炭焼きの化学

Img_1870_1  2010年冬から始めた竹林整備の活動は、まもなく3年目を迎えます。おおよそ200メートル四方の竹林のうち、整備し終えた竹林は未だ点的存在ですが、あるべき竹林の姿を現していて、モデルとしてのデモ効果を発揮しています。また、活動2年目にあたる昨年の冬、竹林内に炭焼き窯を築造し、竹を使った炭焼きを始めました。昨冬は10回ほど炭焼きをし、素人なりに、竹炭らしきものを生産しました。

P1130651_1  当地は、高崎市観音山丘陵南麓にある里山ですが、ここに住む70歳以上の男性は、多かれ少なかれ、その親の世代が炭焼きをしていた経験を持っています。だから、彼らは見様見真似で、炭焼きの何たるかを知っています。しかし私たちのメンバーは、それより下の世代で、経験者はいません。炭焼き窯築造のとき世話になった多野郡木炭組合の皆さんの指導で、兎にも角にも、竹炭焼きを始めました。
Img_1806_1  指導された炭焼きの要諦は、「煙の色を注視せよ」。つまり、白い煙が透明に近い青紫色に変わった時、空気を遮断し、あとは窯の中で蒸し焼きにする、ということでした。煙の色を巡ってはいつも、仲間内で意見が異なります。「もういい」と「まだだ」の対立。私はいつも「まだだ」派で、相棒のMさんはいつも「もういい」派。「もういい」派が勝つと、炭化不十分により、先輩たちの言う「下駄をはいた」状態になります。「まだだ」派が勝つと、炭の歩留まりは極端に下がり、炭より灰のほうが多くなります。煙の色を見ての空気遮断のタイミングが、竹炭の品質と歩留まりの良否に、決定的な影響を与えるのです。
Img_1842_1_2   炭焼き2年目を迎えた私たちの課題は、歩留まりを下げずに如何に高品質の竹炭を生産するか、ということです。勘と経験に頼れないなら、いくらかでも科学の力を借りることができないか。幸いネットには、竹炭についての各種サイトがあり、竹炭や炭焼きについての簡単な化学知識を得ることができます。以下、その要点を記します。
 竹を使った炭焼きは、竹を熱分解という化学反応によって、炭と水分とに分離することです。炭焼きは、竹を燃焼(酸化)させて炭をつくるのではないのです。Img_1818_1竹は、炭素(C)50%、水素(H)6%、酸素(O)43%によって構成された炭水化物(セルロース49%、ヘミセルロース24%、リグニン14%)や糖類、アミノ酸類、クロロフィルなどで組成されています。 この竹を酸素の供給を抑えて加熱すると、これらの炭水化物が熱分解をはじめ、ほとんどの炭素(C)は炭となり(炭化)、一部が二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)となって、その他の成分を含んだ水(H2O)とともに煙として排出されます。この水分を冷やして採ったものが、竹酢液です。この竹酢液は、水のほか酢酸、蟻酸、メタノール、木タールホルマリンなどの成分を含んでいます。
Img_1845_1  炭焼きは、熱分解という化学反応を利用したものであることは上記のとおりですが、その熱分解温度は、炭水化物の種類によって異なります。セルロースは260~310℃、ヘミセルロースは180~210℃、リグニンは310~450℃で分解します。つまり、炭窯の内部温度180~450℃の間で、すべての炭水化物が分解することになります。そしてある段階で、この熱分解(炭化)は終了します。炭窯の中には、炭素の塊である竹炭と熱分解を促すため使われた燃料部分の灰が残っているだけです。だから、炭化終了後に燃焼しつづけると、竹炭(炭素)が燃焼して、二酸化炭素と灰となってしまいます。
Img_1873_1_2  化学は、炭焼きは「燃焼」ではなく「熱分解」だということを教えてくれます。はたして、こうした化学知識を獲得した私たちの炭焼きは、2年目にして、進化するや否や。もはや、中老(初老ではなく)となったメンバーたちの努力がつづきます。
 光合成によって二酸化炭素を吸収し、炭水化物を作って大きく成長した木や竹を炭にすれば、木炭や竹炭の今日的利用(調湿・脱臭・水質浄化・土壌改良等の燃料以外での利用)を前提とすれば、炭として炭素を閉じ込め、固定化することになります。つまり、地球温暖化の防止に役立つのです。こんなことも、竹林整備や竹の炭焼きをする際の励みとして、少し知っておきたい。

写真は、竹・栗・柿・ざくろ・松ぽっくり・南瓜・小楢の実を炭化させたもの。一斗缶に、竹片・いが栗・どんぐりはそのまま、柿・ざくろ・南瓜は籾殻のなかにいれて、炭窯で50時間焼きました。写真にカーソルをあてて、クリックしてください。写真が大きくなります。

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