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2012年1月25日 (水)

寒い風呂場

Img_2877_1 昨年、私の住む地区で、5人の高齢者が亡くなられました。戸数56戸の小さな集落ですが、例年になく死亡者の多い年でした。男性3人、女性2人。全員75歳以上の方たちです。病死が3人で、事故死が2人。事故死のうち1人の方は、胃がんを患っていましたが、直接の死因は、浴室での溺死だったようです。12月の寒い日の夕方でした。 

Img_2881_1_2 入浴中の急死は、年間14,000人と推定されています。そのほとんどが高齢者で、特に冬に多い事故のようです。原因として、浴槽内での熱中症の可能性や、浴室や脱衣室の室温と浴槽内の湯温の温度差が大きいほど血圧変動が大きく、その結果、脳虚血等の意識障害が起きるため、と推定されています。つまり、「寒い浴室・熱いお湯」が、入浴中の急死の住環境の背景になっているのです。(鈴木晃稿『高齢者の「入浴中の急死」に関する地方性』
Img_2867_1  私の住む高崎市観音山丘陵は、市街地よりも最低気温は5,6度低く、零下7℃くらいまで下がるときがあります。隣家の竹林に面した風呂場は、景色を取り込むために、思い切って大きな窓にしました。夏は至極快適ですがしかし、冬は極寒の風呂場と化します。熱い湯の好きな私にとってはまさに、「寒い浴室・熱いお湯」の実現でした。近所の老人の浴室での急死は、「寒い浴室・熱いお湯」の解消を迫ることになりました。
Img_2868_1  そこで、風呂場の大窓を、発泡スチロールの断熱材で塞ぐことにしました。近くのホームセンターで水色の発泡スチロール(180×90×2.5(㎝))を2枚買ってきて、入浴時に風呂場の窓を閉じました。夜、浴槽に湯を入れ始めたときの浴室温度は6℃。いつもより熱めの湯が浴槽の半分ほど入ったときの浴室温度は、8℃まで上がりました。これでは、「寒い浴室」は解消されていません。そこで、湯を蛇口からではなく、シャワーによって浴槽に入れることにしました。
Img_2871_1  シャワーから噴き出す湯は、もうもうと湯気をまきあげ、風呂場はたちまち、濃い霧のなかとなりました。しかし温度は、期待したほどには上がっていきません。温度計をみていても、上がり具合は、きわめてゆっくりとしています。しばらく座敷で待つことにしました。それから15分。風呂場に戻ると、湯気はさらに濃くなり、むっとするような熱気すらおびていました。温度計は、Img_2874_1_2 23℃を指していました。
 「寒い浴室」解消のための「窓塞ぎ+シャワー作戦」は、大成功でした。浴槽の湯温も38℃程度にして、かわりに、ややのんびりとした長湯を楽しみました。
 
 たまたま読んでいた加賀乙彦さんの近著『科学と宗教と死』(集英社新書2012/1刊)のなかで、加賀さんの奥さんが2008年11月の深夜、自宅浴室で亡くなられていたことを知りました。まだ70歳の若さでした。東日本大震災と福島原発事故を契機に、「死」をめぐる思索の集大成をめざして書き下ろされた著作の中で、加賀さんは奥さんの早すぎた死を、痛恨の思いで記しています。

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Croppedtop11 
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