タヌキの弔い
地区の寄り合いでよく話題となるのが、農作物の鳥獣害についてです。猪は、春は筍、秋にはさつま芋や里芋を食い荒らします。ハクビシン(白鼻心)は、木登り上手で、柿や無花果を食べます。隣家の小さな池に泳ぐ鯉の稚魚は、アオサギの餌食となります。野菜も魚も、ひとが好むほどに成長した時、つまり食べ頃に、鳥獣に食べられます。かくして野生の鳥獣たちは、農家の憎っくき敵となりました。
出没する頻度が多い割りに、余り苦情を聞かないのが、タヌキの食害です。かつて、畜産農家が多くあった頃には、飼料として栽培されたトウモロコシがタヌキの大好物だった、と近所の農家から聞きました。そのトウモロコシもあまり栽培されなくなり、タヌキの食害も目立たなくなったようです。
そのタヌキが、年末から年明けにかけて、何度となく私たちの眼前に現れました。いちどは犬の散歩の朝、近所の庭の入り口をうろつきながら、こちらを見ていました。二度目は、犬の散歩の夕方、一軒おいた農家の椎茸栽培のほた木の間から、突然顔を出して、私たちを驚かせました。どちらも丸々と太った大柄のタヌキでした。そして三度目は、家の裏の竹やぶで昼間、日向ぼっこをしている、三匹のタヌキたちでした。母タヌキとその子どものようです。この竹やぶは、家の敷地から2メートルほど下にあり、けたたましく鳴きつづける犬の声で気づきました。三匹とも、頭の大きさばかりが目立つ、やせ細ったタヌキたちでした。しかも子タヌキの二匹は、体の毛がほとんど抜け、皮膚がごわついていました。すっかり弱っているようでした。ダニ起因の疥癬のようです。犬の鳴き声があまりにも騒がしくひつこいので、上から小石をタヌキの近くに投げてつけて脅し、竹やぶの中へと追いやりました。2,3日の間、同じようなことを繰り返していたのですが、大晦日の昼、私の投げる小石に、一匹の毛の抜けたタヌキがほとんど反応しなくなりました。そのすぐ横で、毛のあるタヌキが寄り添うように、じっと伏せっていました。しばらく様子を見ていると、毛のない痩せタヌキは、動きを全く止めてしまい、どうも死んでしまったようでした。
明けて元日、タヌキの死体は、竹やぶのなかに、横たわっていました。二日の朝、泊まりに来ていた小学生の孫娘が、悲鳴を上げました。窓から竹やぶを見下ろすと、毛のあるタヌキが、毛の抜けたタヌキの死体を、食べていました。腹部から内臓に食らい付き、鮮血のしたたる肉を食べていました。毛のあるタヌキは、満腹になると姿を消し、そしてまた、姿を現しては再び三度、毛のないタヌキの死体を食べつづけました。4日の日には、毛のないタヌキの死体は、毛の生えた頭と尻尾を残して、無くなっていました。毛の生えたタヌキは、やせ細っていたので、死体を食べて飢えを凌いだのだと思います。遺体がきれいに片付けられた跡をみながら、、ああ、あれはタヌキの弔いだったのか、とも思いました。
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猪対策に狼の導入 参照 http://japan-wolf.org/content/faq/
投稿: 名無し | 2013年1月28日 (月) 09時05分