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2012年2月20日 (月)

「里山」を学ぶ

Img_3032_1  先週の木曜日、榛名山中腹にある群馬県森林学習センターであった講演会「第2回生物多様性講座・里山林の現状と再生への道筋」を聴講しました。講師は、森林総合研究所・関西支所(京都市)の大住克博さん。このブログ名に「里山」を使い、自らその「里山」に住んでいると、度々記事に書いてきましたが、あらためて「里山」を学んだことはありません。「里山」への関心は、写真家・今森光彦さんの作品によって喚起され、竹林整備の日常において、ますます強くなってきました。大住さんの話は、実践的にも知的にも、おもしろく刺激的で、いい勉強になりました。以下講演概要を記します。(写真は、自宅周辺の里山林)

Img_3130_1_1 1.「里山」とは
 冒頭、「里山」について、次ぎのように定義されました。「日常生活や農業のために、地域の人びとにより利用されることで維持されてきた、森林を中心にした景観」。そこには、雑木林、薪炭林、ふるさとの山、などと呼ばれてきた森林と、それに隣接した集落や耕地が含まれる。だから、「地域の社会や生業、家族的農業と密接な関係」をもち、「精神的・歴史的な価値」をもった「文化的な存在」だと強調されました。それはまさに、今森光彦さんが写し出してきた、あの「里山」世界です。

2.里山林とは
 森林には、自然に枯れて生える「天然林」と、人が伐って植えた「人工林」があり、その中間に、「人と自然の協働でできた森林」としての「里山林」があります。Img_3094_1_1森林は国土の65%をしめ、その森林の37%が里山林。人と自然の協働とは、「人による利用」と「萌芽による再生」を指します。里山林の伝統的な利用としては、火入れ、用材伐採、薪炭伐採、柴刈り、枯葉採り、採草、放牧、山野草・木の実採取などがあり、草は牛馬の餌となり、やがて落ち葉とともに堆厩肥のもととなりました。里山においては、森林と農業は、切り離すことのできない緊密な関係にあったのです。

3.里山の歴史
 江戸時代の里山は、「草山」が卓越し、草の供給を通して農業を支えました。それは、パックス徳川のもと、米本位制と土木技術の向上があいまって水田面積が拡大し、緑肥需要が飛躍的に拡大したためでした。Img_3073_1「草山」の必要量は、耕地面積の5~10倍。100戸50haの村の場合、緑肥用草山は250~500ha、薪炭林は30~35haを必要としました。
 明治以降は、輸入肥料や化学肥料の普及に伴い、草山利用は減少し、薪炭利用に変わっていきました。都市住民の増加や鉄道輸送の拡大が、薪炭需要を高めました。
 コナラなどの落葉樹林からなる薪炭林は、10~30年周期で伐採され、伐り株からのひこ生え(萌芽)によって再生してきました。コナラは、萌芽再生能力は高く、しかも実生5,6年という若いうちから種子をつける(ブナ50年、クヌギ15年)ことができるため、常緑樹が生育できる地域の里山でも、優占し維持されてきました。
 しかし1960年代以降、燃料革命によって薪炭需要は激減し、多くの里山林は放置されました。伐採されなくて50年以上経った現在、木々は大きく育ち、林の中は下生え(耐陰性の常緑樹やササ類)が茂り、かつて明るかった里山林は、すっかり暗い林になりました。Img_3045_1管理された里山林は、中庸な光を好む草花や落葉期の早春に活動する植物(スプリング・エフェメラル)などが多様で、それらを利用するギフチョウなどが飛来したのですが、これらの生きものは、里山の変化とともに激減しました。これが、里山の生物多様性の危機と呼ばれる問題です。

4.公園型整備の問題点
 近年、里山を再生し保全しょうという活動が盛んです。そこで広く採用されているのが、公園型整備。既に大木となったナラ類の上木の抜き伐りと下生え(低木類やササ)の刈り取りで、林内を明るくして生物多様性を守ろう、という管理手法です。Img_3163_1_1しかし、この手法には問題がある。①コナラの高齢化(30年以上) ・大径化(胸高直径30㎝以上)は、萌芽再生能力の低下をもたらし、②抜き伐りによる明るさでも、コナラよりもカシ、シイなどの常緑樹が優勢となり、その結果、③ナラ林の健康は低下し、ナラ枯れ現象を招来する。

5.里山林再生の道筋-伝統的・低林管理の復活
 ナラ類の里山林を健全に維持するためには、伝統的な管理手法である、小規模皆伐による低木化によって、もう一度若い森林に戻していくことが必要です。そのためには、皆伐によってできた多量の木材をどのように利用するかが、最大の課題となります。現在、薪・ペレットストーブなどの利用拡大などの社会実験が、各地で取り組まれつつあります。こうした取り組みが、住民と土地所有者と行政の協働によってなされることが、大切です。

Img_3158_1_1_2  講演の概要は、以上のような内容でした。
 今朝の朝日新聞に、「バイオマス 潤う林業の街」という記事が、掲載されていました。こちらは、製材所で出たかんなくずをペレット状に固め、ボイラーやストーブの燃料に使おうというものです。花卉栽培用のボイラーに使われている事例が、紹介されています。重油で10万円かかっていた燃料代が、ペレット利用で1千円以下になった、という話です。これが事実なのかどうかはともかく、エネルギーの地産地消の有力な案となりそうな予感がします。

  自宅近くの里山林は、しいたけ原木に利用されている場合は、全体に管理は行き届き、講演であった伝統的・低林管理がなされています。しかし多くの里山林は、長期にわたって放置されており、コナラ林に真竹や孟宗竹が進出し、林床にはササや照葉樹(スダジイ、ウラジロガシなど)がはびこり、森林内に足を踏み込むことすらできません。竹林の荒れ具合は、再三記事にしてきたとおりです。
 その放置された竹林整備の最大の課題のひとつが、伐採した竹材をどうするか、という事です。炭焼きで竹炭にできるのは、僅かなものです。粉砕機で竹チップにして堆肥利用とするのが、もつとも有効な施策ですが、現在のところ、その粉砕機そのものを持っていません。粉砕機を入手できたとしても、枯れ竹は粉砕できません。これは、いまのところ燃やすしかありません。竹のペレット化による燃料化が、もう一つの可能性のような気がします。

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