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2012年6月 4日 (月)

地区の「ふれあいの日」

  昨年の6月、組内に住む二人のお年寄りが、同じ日に相次いで亡くなるということがありました。病死と自殺。また年末には、区内の一人住まいの80過ぎの男性が、風呂場で死亡していたところを翌日、近所の人に発見されるという事件がありました。高齢者の孤独死が、日常的に身近で起こっています。高齢社会は、都市と農村をこえて、人と人との関係が疎遠で、孤独な世の中なのでしょうか。

 地区に住む人びとの交流の機会を少しでも増やして欲しい、との区民から出ていた声を受けて、月1回の「ふれあいの日」を設定することにしました。毎月第一土曜日の午後2時から4時までの2時間、区民が自由に公民館に集まろうというプランです。とりあえずは、難しいことは考えず茶菓とおしゃべりを楽しもう、ということになりました。幸い市の助成もあって、会議用椅子・テーブルとテレビ・DVDプレイヤーを購入することができ、「いままでの区の集まりとは、ちょっと違うぞ」といった演出ができそうな雰囲気となりました。

 4月7日(土)夜、「ふれあいの日」の本番に先立ち、区役員とボランティアによる実行委員会が開かれました。すでに3月の区総会で「ふれあいの日」設置を決定・周知し、その後の回覧板でボランティアを募集したところ、この日、役員以外に10名の区民が集まりました。60から70歳代の男女です。テーマは、運営方法と会のもち方について。まず、昔の地区の寄り合いに、話がはずみました。1980年代にはカラオケ同好会があって、しょっちゅう集まっていたこと。養蚕が盛んだったころは、農事組合の集まりが度々あったこと。田植え、稲刈り、冠婚葬祭での寄り合いなど、村に活気があったころの思い出話に花が咲きました。
 では新しい寄り合い「ふれあいの日」は、どのようにしましょうか。
 食べ物・健康・自然・農事などの季節の話題の提供とおしゃべり。茶を飲みながらのおしゃべりだけでも。カラオケの日があってもいいな。若い人は、卓球なんかも。ゲームも面白いようだ。活発にアイデアや意見が出ました。なかなか、幸先のいい出だしです。どれもこれも、一度はやってみたい。そこでまずは、茶菓でおしゃべりを楽しもう、と結論。また、80歳以上の高齢者には、区の三役が招待状をもって、訪問することが決まりました。

 5月5日(土)、第1回「ふれあいの日」。参加者22名(女14名 ・男8名)。80歳以上の在宅者19人に招待状を手渡し、12人が参加。しかし、80歳未満は、世話役の9人を除けば、たったの1人。実質、招待者と世話役との交流会になりました。もう少し、年齢層をひろげたい。また、会議用机を3つの島に分けてセットしたところ、男・女・世話役の3グループに分かれてしまいました。今後は、無理のないところで、男女・世代の交じり合いを工夫したい。
 この日はお茶請けには、竹の子の木の芽味噌あえと柏餅を用意し、茶は屋久島産の新茶を出しました。世話役の作った竹の子料理は大好評で、今後もこの会のお茶請けは、地産地消で季節の料理や菓子にこだわることとなりました。
 会合の冒頭に、ビデオ映像『竹・内に秘めたミラクルパワー』(NHK制作・11分)を上映。竹林が多く、竹の子料理を見ない日がない地区だけに、タケノコの成長にスポットを当てた美しい映像は、参加者を釘付けにしました。このビデオを見た後、Mさんはたち上がって、ことしの「大豊作・価格低迷」となったタケノコの作柄と市況について、報告しました。「ふれあいの日」には、こうしたビデオによる話題提供も、必要かつ有効だと思いました。
 3箇所に分かれたテーブルでは、男は農事や病気のこと、女は食べ物や噂話に花が咲き、大きな笑い声もまじりながら、楽しいひと時を過ごしました。
 椅子とテーブルの導入は、期待した以上に参加者に喜ばれました。従来の低いテーブルに向かって座布団に座ることの苦痛は、高齢者に共通の悩みだったのです。
 最後に全員で記念写真をとり、次回の参加を約束しあって、終わりました。まずは盛会な「ふれあいの日」でした。

 6月2日(土)、第2回「ふれあいの日」。参加者24名(女17名・男7名)。新規に5名参加、80歳以上は前回同様に12名、世話役を除いた80歳未満は3名に。女性参加者が増えたこともあり、テーブルの3つの島には、男女・世代が適当に交じり合いました。今回は、全員から会費100円/人をもらいました。80歳以上の方には、招待状に代えて個別に案内状を手渡しました。
 世話役会での会費徴収の議論。80歳以上の高齢者は、敬老の気持ちを込めて無料=招待とする、という事務局の提案に対して、異論が出されました。高齢者も含め参加費を自ら出すことによって、参加意識が高まるのではないか。自分たちだけ会費を出さないということに対して、高齢者は嫌がったり遠慮したりするのではないか。いわれてみれば、なるほどと思いました。その結果、原則会費徴収することになり、敬老の日のような高齢者主体の催しに際しては、招待することにしました。
 お茶請けは、キャラブキ・椎茸煮物・ジャガイモお焼きなどが、世話役によって作られました。予定していたマルベリーゼリーは、桑の実が未熟だったため、次回に作ることになりました。
 今回のビデオは、『綾小路きみまろの爆笑スーパーライブ』。世話役会で、きみまろファンから是非にとの推薦があり、上映することにしました。30分のライブものですが、中高年共通の人生の機微にふれて、爆笑を誘います。このビデオ上映は、前回のやや堅かった雰囲気から、この会を一気に和やかで気楽なものに変えました。お茶請けが多かったことも手伝い、ビデオ鑑賞のあとのおしゃべりは、どのテーブルも盛り上がりました。
 男性の多い席では、煙草耕作の昔話(煙草と養蚕の矛盾、煙草葉の闇売り)や梅の作柄(開花遅れと蜜蜂減少による不作)が話題となりました。女性だけの席では、昔の田植え時期の苦労話が語られました。田植えは、家族ごとに親戚の手伝いや日雇いによって実施、この際嫁は、手伝いの親戚ため、食事の準備や夜の宴席の応対で多忙となり、だから田植えや行事は、大嫌いだった、と一同声をそろえました。ほぼ半世紀ほど前の話です。
 参加した女性から、最近は区で楽しいことを企画していただけるので、地区が明るくなったように感じる、との感想が寄せられました。企画者としては、これ以上の褒め言葉はありません。

 地区の人びとの交流をめざした「ふれあいの日」は、このようにして始まりました。

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コメント

この間もこの試みを聞きましたがとても素晴らしい企画ですね。
その内に自らがそれぞれの得意技を披露すると言うところまで持っていけると緊張感を持ったりして楽しさが増すかもしれませんね。
私の知る詩吟の先生は難しい漢詩だけでなく、短歌、俳句、現代詩等を好みに応じて見事な節回しで朗々と詠い結構多くの人が楽しんでいます。地元にそんな機会を待ち望んでいる人もいるかも知れないので参考までに。そのことが苦痛になってはいけませんが・・・


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