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2012年12月14日 (金)

憲法と法律が、被ばくを避ける権利を保障している

 今年7月16日の代々木公園は、「さようなら原発 !」を訴える巨大な人びとで埋まりました。呼びかけ人のひとり大江健三郎さんは、政府による大飯原発再稼働によって「わたしらは侮辱のなかに生きています」と発言しました。中野重治の小説『春さきの風』からの引用です。戦前の無産政党弾圧のなか、留置場で放置された赤ん坊の死をまえにして、母親がつぶやいた言葉です。そしてこの母親は、「生から死へ移っていったわが子を国法の外にささえることを」を思っています。

 福島原発事故から垂れ流された放射能に怯える母親たちは、果たして、国民の生存権を保障した憲法をもつ国の法律の内側で、子どもたちを支えることができるのか、それとも「わが子を国法の外に支える」ことしかできないのか。このことが今、きびしく問われています。憲法は、前文において、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」と宣言します。また、13条において、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と政治に求め、25条において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と保障しています。 

 3・11後の今日、これらの人権規範を現実化するためには、新たに「被ばくを避ける権利」を保障しなければなりません。日本社会に生きるすべての人びと(これから生まれてくる人びとも含めて)が、この権利を現在から未来にわたり享受していくため、すべての原発の廃炉が、当然に求められます。そして現在、福島はもちろん、東北・関東の放射能汚染地域に住む人びとに対しては、緊急の支援が求められています。この要求に答えようとするのが、今年6月、超党派議員による議員立法によって、全会一致で成立した「原発事故子ども・被災者支援法」です。
 
 「原発事故子ども・被災者支援法」は、被災者の生活支援と健康被害の未然防止を定めています。そして、人びとが被災地に「居住する権利」、そこから「避難する権利」、そしてその地に「帰還する権利」を認め、その選択は自らの意思によって行うことができる、とした画期的な法律です。
 「支援法」に定められた支援策は、次のようなものです。
 「居住」を選択した場合は、医療の確保、子どもの就学援助、食の安全・安心の確保、放射線量の低減及び生活上の負担軽減のための地域における取り組み支援、自然体験活動等を通じた心身の健康保持に関する支援などです。
 「避難」または「帰還」を選択した場合は、移動の支援、住宅の確保、就業支援、学習支援などを受けることができます。また、家族と離れて暮らす子どもに対する支援も受けることができます。
 またこの法律は、放射線が人の健康に及ぼす危険について、科学的に十分解明されていないことを前提に、被災した子どもの生涯にわたる健康診断や、妊婦や胎児を含めた医療費の減免措置を定めました。

 この法律の対象となるためには、被災者の居住する・あるいは居住した地域が、「支援対象地域」に指定される必要があります。その「支援対象地域」とは、「放射線量が一定の基準以上である地域」と定められていますが、その「基準」はまだ決まっていません。また、上記の支援策も、財政措置をともなった具体的内容は、今後、政府の作成する「基本方針」を待たなければなりません。この際の最大の争点の一つが、「規準」を何処におくかということです。多くの被災者支援団体からなる「原発事故子ども・被災者支援法市民会議」は、「追加被ばく線量が内部被ばく、外部被ばく併せて年間1ミリシーベルトを超える地域を支援対象地域」とする明確に主張しています。日本の国内法制や国際放射線防御委員会(ICRP)の定める被ばく防止規準が、年間1ミリシーベルトとしていることから、市民会議の主張は、合理的だと思います。
 
 今回の衆院選挙を前にした市民会議のアンケートに対して、脱原発や卒原発を明確に打ち出している政党は、「年間1ミリシーベルト」を超える地域を「支援対象地域」とする、と回答を寄せています。しかし、現政権を構成する民主党と国民新党、あるいは次期政権をうかがう自民党や日本維新の会は、実質的に態度を保留しています。
 明後日の衆院選投票に当たっては、原発被災者を本気になって支援してくれる政党と候補者を是非、選びたい。そして、新しい政権が、「国は・・これまで原子力政策を推進してきた・・・社会的責任を負っている」という「支援法」の認識にもとづき、被災当事者の意見を最大限尊重のうえ被災者支援に真摯に対応するよう、国民は監視していく必要があります。                                                       

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