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2013年10月17日 (木)

福島第一原発のいま

 日曜日に東京・日比谷公園で開催された『10.13 No Nukes Day 原発ゼロ統一行動-福島を忘れるな・再稼動を許すな』に参加できませんでした。そこで、この統一行動に連帯する気持ちを込めて、この2日間、福島第一原発の現状について、ニュース・サイトNPJ掲載の新聞記事や「世界」の記事、地元であった講演会のレジュメ等を読み直しました。そこには、安倍首相の「汚染水はコントロールされている」という発言とは別の世界が、広がっていました。「福島第一原発のいま」は、以下のような状況なのです。

 政府による「収束」宣言にかかわらず、福島第一原発ではいまだに、重大事故が相次いで発生しています。今年春には、仮設配電盤に侵入したネズミによって停電が発生し、使用済み核燃料プールの冷却機能がストップしました。また、地下貯水槽から放射性物質に汚染された水が漏れだし、急遽、地上タンクへの移送を迫られました。夏には、地上タンクから高濃度汚染水300㌧が漏出し、国の内外から政府と東電に対して、厳しい批判と懸念が表明されました。原子力規制委員会は、「レベル3」(重大な異常事象)に相当すると発表しました。  

 そして秋、依然として高濃度汚染水の漏出はやまず、さらに初歩的なミスによる重大事故が多発しています。9月の台風18号のときには、汚染水を貯めているタンクを囲む堰から雨水が漏れるトラブルがありましたが、昨日現地を襲った台風26号では、この堰に貯まった汚染された雨水を排出せざるを得なくなりました。9月下旬には、タンク内に置き忘れたゴムパッドが原因で、ALPS(多核種除去装置)が機能停止し、汚染水処理がストップしました。10月に入り、傾斜のあるタンクに雨水を入れすぎ、汚染水430㍑が堰を越え、一部が海に流出しました。1週間前には、汚染水淡水化設備の配管を誤ってはずしたため汚染水があふれ、作業員が浴びるという事故がありました。 

 こうしたお粗末だけど深刻な事故が相次ぐ背景には、政府の無策のもと、東電によるコスト削減と作業員の労働条件の劣悪化、といった問題が指摘されています。
 コスト削減を目的に競争入札がすすみ、従来の会社が受注できず、現場から熟練した現場監督やベテラン作業員が去っていきました。また、クレーンなどの重機類は、放射性物質の汚染後は外部では使用できなくなるため、古い型式の中古品が持ち込まれ、オペレーターから「骨董品」だと揶揄される始末です。
 事故の収束・廃炉作業のつづく現場は、放射線量が極めて高いうえ、高濃度汚染水が広範囲に漏出しており、現場作業員は毎日、高い被ばく線量と闘いながら働いています。原発作業員の被ばく線量の上限は、1年50㍉シーベルト以内、5年間で100㍉シーベルト以内とされています。こうした現場で働く作業員の声を、東京新聞記者・片山夏子さんの記事(「世界」10月号)から引用します。
 
 被ばく線量40㍉シーベルトを超えて解雇された若い作業員は語ります。
 「仕事を失わないため必死だった。5年間で20回は線量計を持たずに現場に入った。高い線量の作業ばかりさせられて、被ばく線量が増えたからといきなり解雇された。被ばく隠しか解雇か迫られているようなものだった。」
 原子炉建屋で作業した短期契約社員の証言。
 「現場監督もベテラン作業員も残りの線量がほとんどなかった。自分のような短期間で高い被ばくを担う『高線量要員』が必要なのがわかった。」 
 被ばく線量が50㍉シーベルトとなって退職したベテラン作業員は、心の内をあかします。
 「結局、事故収束のために必死で作業した作業員は使い捨てになっている。何とか福島第一原発に戻って事故を収束したい、廃炉まで見届けたいという気持ちが、だんだん薄れてきてしまっている。」

 東電はすでに、同社社員を福島第一原発とくらべ柏崎刈羽原発により多く配置している、と新聞は報じました。東電は事故収束よりも原発再稼動を優先している、と国会で共産党議員が政府を追及しました。経営主義に陥り、モラルも能力も失った東電に、今後の事故収束と廃炉作業を任せることは、最早、不可能ではないかと思います。政府はただちに、東電に代わる事故収束と廃炉を担う事業体を確立すると同時に、今後の廃炉作業を担っていく作業員の労働条件の抜本的な改善、被ばく線量の低減化対策、および多重請負の規制などに取り組みべきです。意欲と技術力をもったベテラン作業員の確保こそ、事故収束と廃炉への最初の一歩だと確信します。

追記:ドイツの国営放送ZDFの「原発作業員の実態」と題したドキュメンタリーが、字幕が付けられてYouTubeにアップされています。福島原発事故は、世界が見つづけています。

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