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2015年1月19日 (月)

沖縄への旅 2 -佐喜眞美術館で「沖縄戦の図」を観る-

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 木曜日の夕方近く、宜野湾市の佐喜眞美術館を訪ねました。丸木位里・俊夫妻の「沖縄戦の図」を観るためです。入口から入った最初の部屋では、草間彌生展が開催されており、昨春松本で見たあの大きなカボチャの版画に、再会しました。

 草間作品を見たあと、直線状に並んだ第二、第三の部屋へと歩を進めました。三つの部屋の中で一番大きな第三の部屋に、丸木位里・俊夫妻の『沖縄戦の図』が展示されていました。原色の際立つ草間作品とは対照的に、丸木夫妻の作品は、黒と灰色のモノトーンの世界に、激しく燃えさかる炎の赤と静かに漂う海の青が対置され、写実的にあるいは象徴的に描かれた沖縄県民の犠牲の姿が、観る者に強烈なメッセージを伝えています。数人の観客が押し黙ったまま『沖縄戦の図』(1984年)を観ていた時、ひとりの男性が現われ、この絵について解説してくれました。佐喜眞美術館の創設者で館長の佐喜眞道夫さんでした。

 絵の左下に、次のような添書が記されていました。
     沖縄戦の図
     恥かしめを受けぬ前に死ね
     手りゅうだんを下さい
     鎌で鍬でカミソリでやれ
     親は子を夫は妻を
     若者はとしよりを
     エメラルドの海は紅に
     集団自決とは
     手を下さない虐殺である

Img_0002 この添書きの上方、絵図の左側半分に、強制集団死(集団自決)のシーンが描かれています。そのひとつ、首に縄を掛け合って殺し合う母と息子。よく見ると、母親の首に掛かった縄は締め付けられていますが、息子のそれは緩んでいます。佐喜眞館長が説明します。早く絶命した方の手は脱力し、他方の首の縄が緩んでしまいます。丸木夫妻は、この絵をかく前に、100冊を超える沖縄戦関係の書物を読み、多くの沖縄県民から沖縄戦体験談を聴いた、ということです。こうした準備が、この絵の写実性を付与し、描かれたことが真実であることを保証しています。
Img2_3 絵図の右半分では、娘を連れた母親や女が、劫火のなかを逃げ惑っています。女たちは頭上で風呂敷包みを運びながら駈けていきます。「あの風呂敷包みに何が入っていると思いますか?」と館長が尋ねました。「食べ物」という答えはすぐに出てきましたが、他に何だろうと思案していると、館長は「最も大切にしてきた着物」だと教えてくれました。生きるために食べ物を持ち、死に備えて死装束としての着物を持って逃げた、というわけです。壕(ガマ)のなかにとどまっても外に逃げても、死はすぐ近くにあったのです。

Img1 第三の部屋の右側の壁には『沖縄戦の図-ガマ』(1986年)が掲げられていました。1945年3月23日米軍は沖縄全域を空襲、翌24日沖縄島への艦砲射撃が始まりました。沖縄戦の始まりです。4月1日には沖縄島に上陸し、機銃掃射や艦砲射撃で日本軍を追い詰めました。住民は着の身着のまま、南に向かって逃げガマに隠れました。ガマのなかは、飢餓と病気と戦火の恐怖が充満していました。佐喜眞館長は、幼子を抱いた母親を指して、次のように語りました。「この母親は、いまだ言葉も話せないわが子に、ガマのなかを見せているのです。沖縄戦の事実を記憶させているのです」。

 丸木位里・俊 作『沖縄戦の図』は、思いがけず佐喜眞館長の心のこもった解説付きで、観賞することができました。丸木夫妻が、日本と世界のすべての人びとに放ったメッセージが、この絵に凝縮されていると思いました。それは冒頭部に引用した、この絵の添書きの言葉が絵と一体となって、私たちに語りかけています。

 Img_5600 美術館の屋上に上ってみました。眼下に、広大な飛行場が横たわり、その向こうに海が広がっていました。米軍普天間飛行場です。美術館の両脇には、飛行場との境界となるフェンスが張られています。佐喜眞美術館は、普天間飛行場の脇腹に食い込むような形で建っているのです。滑走路からは、ヘリコプターのプロペラ音が、一刻も途絶えることなく鳴り響いていました。飛行場と住宅地は、幅の狭い緑地帯を挟んで、隣接しています。「世界一危険な基地」の現実が、目の前に広がっていました。

Img_5419 断崖の広場として有名な観光地の万座毛にいたとき、上空を爆音を立てて飛び去る飛行機がいました。オスプレイです。普天間飛行場ではその姿を見ることが出来ませんでしたが、観光地で見ることができました。




 



 

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