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実は前回の記事は、孫歌著『北京便り 中国の真の面影』の紹介を意図して書きはじめたのですが、結果的に、この本とは直接関係のない竹内好の著作に関する記事となってしまいました。竹内好が1960年代、時の政府の反中国政策を向こうに回し、日本の人びとの中国理解を促す目的で「中国を知るために」を書きつづけたように、孫歌氏は国家間の緊張と日本社会で反中意識が高まるなか、日本の読者に対して普通の生活人の中国の姿を見て欲しい、中国の体温を届けたいと願い、2009年から2013年までの約4年間、日本語による「北京便り」を『図書』(岩波書店)誌上に隔月で寄稿しつづけました。しかも、彼女は日本政治思想史研究者として、竹内好に(「竹内好が黙って座りながら私を眺めているという幻覚(p.109)」を見るほどに)敬愛の念を抱きつつ、卓越した読み手として竹内好の著作を読みつづけてきました。こうした因縁を書くつもりだったのです。長い前書は、ここまで。
今から40数年前、日本社会は日中国交回復を契機に、空前の中国ブームに沸き立っていました。そうした折私は、当時高校教師をしていたマルクス思想研究者の内田弘さんから、竹内好著『中国を知るために
第一集~第三集』を読むことを薦められました。この本は、日本政府が米国の中国封じ込め政策に従っていた1963年から日中国交回復が実現した1972年までの10年間、著者が毎月1回雑誌『中国』に投稿しつづけたエッセーを集めたもので、内容は「もちの話」「漢文をどうするか」「郵便制度のこと」など、中国または日中関係についての千差万別の話題におよんでいます。